研究課題/領域番号 |
17H06130
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
河野 孝太郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80321587)
|
研究分担者 |
川邊 良平 国立天文台, 電波研究部, 教授 (10195141)
成瀬 雅人 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (10638175)
田村 陽一 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (10608764)
上田 佳宏 京都大学, 理学研究科, 准教授 (10290876)
|
研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
|
キーワード | ミリ波サブミリ波 / 宇宙星形成史 / 輝線銀河 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
研究初年次となる平成29年度は、本研究の根幹となる新技術、すなわち、オンチップ超伝導分光システムの天体信号検出による概念実証に成功し、さらに取得したデータの解析手法の開発とそれを使ったデータ解析が大きく進展した。すなわち、2017年10月-12月期にチリ・アタカマで運用中のサブミリ波望遠鏡ASTEにDESHIMA技術実証機を搭載し、系内天体から宇宙論的な距離にある天体まで、多様な天体の観測を行い、実際に輝線を検出することに成功した。これは、実験室での実証実験を超え、実際に天体信号を使って、本技術が天文学研究に新たな道を開くものであることを初めて世に示した大きな一歩である。新しい概念の装置であるがゆえに、観測データの解析手法、さらには観測の手法そのものについても、開発要素が大きい。そのため、実際に観測を進めながら、データを解析し、より望ましい雑音信号・大気信号除去のためのスキャン方法や、観測手法についても改善を進めた。こうして取得された膨大なデータを解析するための解析手法に関する研究・開発についても大きな進展があった。 メキシコにある大型(口径50m)のミリ波望遠鏡LMTへ搭載する多画素版DESHIMA(MOSAIC)の開発については、導入予定の冷却系システムの仕様や関連する技術の成熟度などの検討・評価を進め、より実現性の高いシステムとしての設計の見直しおよび具体化を進めた。電磁波解析も進め、ASTE望遠鏡での搭載試験を踏まえた超伝導チップの設計改良を行なった。また、メキシコ現地を訪問し、搭載に向けた筋道をつけるための協議も行なった。 このほか、ALMA等を使った準備研究も進めた。特に、GOODS-S領域での45時間を投入した大規模掃天観測により得られたデータの解析を進め、その初期成果を出版・公表することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オンチップ超伝導分光システムDESHIMAの技術実証モデルをASTE望遠鏡に搭載し、系外銀河を含む複数の天体からの信号検出による初の概念実証を行うことに成功した。さらに、そこで得た新たな知見を踏まえた設計の改良や読み出し回路システムの導入も進めている。また、関連する準備研究として行なっている、ALMAを用いた大規模な遠方銀河探査についても、重力レンズ銀河団を探査するALMA大型プログラムが採択されるという大きな前進があった。こうしたことから、本課題は着実に進展していると判断している。一方で、装置の最終的な行き先であるメキシコ現地での安全面での問題など、当初予期しなかった情勢の変化もあり、今後、当初予定通りに進められるかどうかについては、やや不透明な点も生じている。まずは安全面を最重要なポイントとして無理はせず、実験室での実験やチリにあるASTE望遠鏡でのDESHIMA科学観測モデルの搭載および科学成果の獲得を進めつつ、メキシコでの活動については、慎重に進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
LMT望遠鏡へ搭載する多画素版DESHIMA(MOSAIC)の開発や、実験室での評価実験、および、チリにあるASTE望遠鏡でのDESHIMA科学観測モデルの搭載および科学成果の獲得を進めていく。メキシコでの活動については、安全面を最重要なポイントとして無理はせず、慎重に進めていく予定である。
|