研究課題/領域番号 |
17H06132
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
青木 茂樹 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (80211689)
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研究分担者 |
中野 敏行 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (50345849)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | ガンマ線 / 原子核乾板 / エマルション |
研究実績の概要 |
2018年4月にオーストラリアにてJAXA大気球実験室との共同により実施した大気球に搭載した中面積エマルション望遠鏡による観測実験の解析を進めた。 フィルムのサイズに対して超高速飛跡読取装置の可動域が小さいために、1枚のフィルムを9ないしは12のエリアに分割してデータ収集を行うが、隣接するエリアの境界域でどちらでも読み取られる共通の飛跡データを利用して飛跡の精度を損なうことなく連結する解析法を確立することにより、分割して読み取ったデータをあたかも連続した1枚のフィルムとして取り扱う事ができ、イベントの再構成にあたってエリアの境界域での損失を避けることができた。これにより検出効率の入射角度による依存性を抑制することに成功している。シフター部の解析では、検出効率、ノイズ混入率等の基本パラメータを解析データを用いて評価する手法を確立し、解析条件の最適化をはかり、タイムスタンプの効率を最大化することができた。姿勢モニターのスターカメラの解析では、3台のスターカメラから得られた天球に対する各カメラの視線方向情報から、エマルション望遠鏡本体の天球に対する姿勢を再現する手順を確立した。 各コンポーネントの解析データを総合することにより、各ガンマ線イベントの到来方向を天球上にマップすることができ、既知の高輝度天体であるVelaパルサーからのガンマ線を5σの有意度で検出することに成功した。 2018年実験の解析結果も踏まえて、2021年春に予定されているオーストラリアでの気球観測実験にむけて、大面積望遠鏡制作のための原子核乾板乳剤、フィルムの量産システムの開発、大面積シフターのプロトタイプの製作、大面積望遠鏡のための与圧容器の製作を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年に実施した中面積望遠鏡での気球実験の解析が順調に進み、目標としていた既知の高輝度ガンマ線天体であるVelaパルサーからのガンマ線を5σの有意度で検出し、世界最高解像度で結像することに成功した。また、2021年春に計画している大面積望遠鏡による気球実験のための各種の準備も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年春に計画している大面積望遠鏡による気球実験のための各種準備をさらに推し進め、大面積望遠鏡実機の製作・地上試験に本格的に着手する。 新型コロナウイルスの影響により、オーストラリアへの物資の輸出入やヒトの移動が予定通りに行えるか否かについては、慎重に見通しをたて、必要があればスケジュールの見直しを検討する。
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