研究課題
スカーミオン格子実現の候補物質と考えている磁場下のNiGa2S4において、その磁場温度相図を確立するため、最大60Tまでのパルス強磁場下における磁気熱量効果と磁化過程の詳細な温度依存性の測定を行った。また、ハミルトニアンの高次項の観測を目指した中性子散乱実験を行った。今後、強磁場下でのESRや中性子実験を行ってゆく予定である。スカーミオンを直接観察するための強磁場中性子小角散乱実験を行うための磁場発生装置と冷凍機の開発を進めた。Z2渦を実現する有力な候補物質NaCrO2について、良質で大量の粉末試料を合成する条件を確立し、FZ法と各種フラックス法を用いて単結晶育成条件を探索した。また、その他の三角とハニカム構造物質群を探索し、候補を選定した。以上の評価と合成に必要なリアルタイムX線ラウエ回折計・TG-DT分析計・高温炉を購入・整備した。Z2渦の観測を念頭に、三角格子最近接反強磁性ハイゼンベルグモデルおいて、線形応答理論に基づいてスピン伝導率・熱伝導率の数値的解析を行い、スピン伝導率の縦成分がZ2渦転移温度付近で大きな異常を示すことを明らかにした。今後、Z2渦転移とスピン伝導度の関連について、より詳細な解析を行う予定である。3角格子と同様の3回対称性を持つハニカム格子磁性体についても、次近接相互作用等でフラストレーションを導入すると、大変興味深い新奇な秩序が実現され得る。いくつかの典型的なフラストレーション・パラメータ値に対し、対応するハイゼンベルグモデル系の磁場-温度相図を求め、カイラリティの正負が交播するカイラリティ密度波が形成されるdouble-Q相や、波紋状にスパイラルが伝播する"ripple相"などの、特異な多重Q秩序状態を新たに見出した。対応する実験系の探索を、今後進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
サンプル作成は順調に進んでおり、高磁場測定に対する準備と予備実験についても、概ね計画通り進んでいる。理論面からも、輸送性質やダイナミクスの数値計算が可能な状態になり、これまでの主たる対称モデル系であった3角格子系を、ハニカム格子系等に拡張する計算も順調に進んでいる。
今後は、理論と実験の協力を一層緊密化しつつ、いよいよ中性子実験を開始するとともに、輸送測定やESR等の新しいプローブを用いた測定も実施していく。またZ2渦やスカーミオンの候補物質についても、前年度に上がった候補物質について、さらなる検討を進める。理論面からは、3角格子系に対して輸送現象、ダイナミクスの計算を進めつつ、3角格子系以外の系についても、トポロジカル励起、スピンテクスチャ由来の新現象の探査を行う。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 4件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (30件) (うち国際学会 5件、 招待講演 8件) 備考 (1件)
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