研究課題
放射線帯のモデリングとして、斜め伝搬コーラス波動と電子の相互作用によるグリーン関数のデータベースの構築を進め、さらにヒス放射による放射線帯電子のピッチ角散乱を調べるために、内部磁気圏におけるヒス放射の観測データの解析を行った。「あらせ」衛星の観測により,コーラス波の発生に伴って30秒以内の速い時間スケールで,エネルギーの高い電子が新たに生まれていることが見出された.被加速高エネルギー電子は,コーラス波と相互作用できることを理論的に確認しており,コーラス波による急速な電子加速メカニズムが可能であることを観測的に示したこと(Kurita et al., 2018),など,「あらせ」衛星観測によるコーラス波と電子加速・散乱に関する研究を着実に進めている.MMS衛星のデータ解析により、電磁イオンサイクロトロン波動とイオンが相互作用し、非線形理論で予想されるイオンホールが形成していることを示すことに成功した結果がScience誌に受理され出版された。MMS衛星観測から示唆された電子サイクロトロン波によるピッチ角散乱の効果を取り入れた衝撃波における電子加速モデルを構築し、これをもとにMMS衛星観測データの詳細解析を行った。「感度は低いが超小型」のアナライザーについて、超小型粒子観測器の14個のセンサーエレメントをピーク樹脂で製作した。更に、樹脂製センサーエレメントに導電性を与えるためのメタライゼーション処理を行い、センサー電極として機能するエレメントの製作に成功した。また、宇宙プラズマ中での加速をその場で捉えるために必要となる多点同時観測を可能とする衛星群観測で必要となるプラズマ波動観測器の超小型化を特定用途集積回路(ASIC)の設計・開発によりチップ化して実現した。スペクトル型、波形捕捉型の両タイプを同時に実現できる受信器チップで、従来のサイズ、重量において1桁の小型化が実現できる。
2: おおむね順調に進展している
斜め伝搬コーラス波動と相対論的電子による粒子加速機構の理論解析を進めている。電子密度の高い部分がプラズマ圏の外側に伸びるプルームの中でヒス放射げ見つかり、その周波数スペクトルの特性からその波動の発生原因として非線形波動成長理論を検証した。あらせ衛星の観測運用・データ処理は順調に進んで折り,内部磁気圏における電磁サイクロトロン波による高エネルギー電子の加速・散乱機構に関する良質なデータを蓄積することができている.あらせ衛星のデータから,地球の放射線帯において高エネルギー電子のプラズマ波動を介した加速や散乱の寄与が無視できないことを示す,観測的研究成果があがっている。MMS衛星による電子サイクロトロン(ホイッスラーモード)波動の解析を推進するために、データが入手出来ている全期間に対して、周波数解析を行い、波動の有無が確認できるプロットの作成を進め、今後より詳細な研究が可能なイベント例を選定している。衝撃波のMMS観測については、電子加速の効率の良いイベントでは電子サイクロトロン波の強度が電子加速の理論モデルから予測される必要条件を満たすことが分かった。これはピッチ角散乱が十分強く働き、効率的な電子の閉じ込めが起こっていることを意味する。超小型粒子観測器の14個のセンサーエレメントの製作に成功したことに加えて、2019年度に実施する予定の特性取得試験に用いる試験治具やイオン・電子を検出するための検出器(MCP)も入手済であるため、概ね順調に進捗していると言える。プラズマ波動観測器のチップの高度化(広帯域化、線形性の改善等)に取り組む他、波動粒子相互作用をこのチップと組み合わせて捉えることができるよう、プラズマ粒子観測器からその粒子捕捉情報をプラズマ波動観測器に入力するためのチップの開発に取り組んでいる。
斜め伝搬コーラス放射による粒子加速機構の理論解析を進め、観測データとの比較を行う。また、斜め伝搬コーラス放射による放射線帯形成過程のシミュレーションとして、本年度構築したグリーン関数データベースの畳込積分を実行し、有効な加速と相対論的電子のフラックス形成が短時間に起こることを検証する。あらせ衛星の観測は順調に継続されており,太陽活動極小期を経て、地磁気活動が活発化するフェーズに向けて,新たな観測的知見を期待できる.また,MMS衛星やGeotail衛星との磁気圏夜側における同時観測データが得られており、電磁サイクロトロン波動を励起する磁気圏側からの注入現象との関連にまで研究を進める予定である。MMS衛星のデータから選定されたサイクロトロン波動のイベント例について、波動の空間スケール、波動粒子相互作用の非線形性をコントロールするパラメータ等について解析を進めていく。2019年度には、14個の超小型軽量のセンサーエレメントを複数並べることで必要な感度を確保する超小型粒子観測器の特性取得試験を行うのと並行して、検出器からの信号を検出するためのアナログASICの試作を行うことで、最終的な目標である、超小型粒子観測器の完成に向けて研究を進める予定である。ASIC開発を通して、プラズマ波動観測器も、プラズマ粒子センサーからの信号をプラズマ波動観測器に入力するための部分も、すべてチップ化して超小型化する方針で開発を進めている。サイクロトロン運動する粒子軌道の数値解法を高精度化する方法としては、部分厳密解を使う他に、特定部分の時間ステップを細かくするサブサイクリングも有効である。そこで、サブサイクリングを取り入れたPIC数値解法を開発・評価する予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 7件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 16件、 招待講演 7件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (2件)
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