研究課題
放射線帯変動のモデリングとして、数値グリーン関数を経度方向の変動を含むように拡張し、かつ斜め伝搬コーラス波動による加速散乱機構をテスト粒子計算に取り込むことに成功した。新しいグリーン関数データベースに基づき、斜め伝搬コーラス放射による放射線帯電子の生成と消失の過程を再現することが可能になった。磁気圏界面における磁気リコネクションイベント付近でのMMS衛星観測データから、非線形波動粒子相互作用の直接証拠である電子のジャイロ位相空間での非一様性を見出した。これは内部磁気圏の文脈で考えられてきた非線形波動成長理論の有効性・普遍性を示す結果であると考えられる。「あらせ」衛星の観測による内部磁気圏領域のプラズマ波動とで電子加速・散乱に関する研究を進めた.これまでのVan Allen Probes衛星との協調観測結果に加え,地上観測との連携による研究,もしくは数値シミュレーションとの共同研究などを実施し,磁気圏のコーラス波が放射線帯の高エネルギー電子を散乱し,MeV電子を地球の超高層大気にまで降り込ませていることを実証(Miyoshi et al. (2021))などの成果があがっている.WPIAの小型化に向けた粒子検出器に対して、TOF(Time of Flight)の機能まで考慮した設計を行い、チップ性能としてより実用に近づいた。一方、小型真空チェンバーをもちいて粒子検出チップの性能評価を行い、改良点の洗い出しを行った。プラズマ波動チップは、オペアンプの改良を行って広帯域化に成功した。試作したピーク材を利用した小型軽量低エネルギーイオン・電子センサーの特性取得実験を行った。その結果5つの入射口のうち、両端の2つの入射口については粒子が通過しないという問題が明らかとなったが、この原因を解明し、問題を解決した改良型のアナライザーを設計製作することが出来た。
2: おおむね順調に進展している
コーラス波およびヒス放射の非線形成長過程について粒子モデルの計算機実験を行い、波動発生領域の空間的な広がりとパラメータ依存性について新たな知見を得た。特にコーラスを発生させる電子のエネルギーの有効範囲が解明できた。MMS衛星観測データのサーベイから、ジャイロ位相の非一様性は衝撃波近傍、磁気シース、磁気圏界面など多くの領域で普遍的に見られることが分かってきた。また、MMSの各衛星間距離は10km程度と非常に近接しているにも関わらず、ジャイロ位相の非一様性は必ずしも全衛星で見られるわけではなく、コヒーレントな波動・粒子相互作用が発動する空間スケールが電子スケールであることが示唆される。「あらせ」衛星の観測により,太陽活動度極小期の「あらせ」軌道に おける内部磁気圏現象の概要が把握できた.データ較正などのデータ処理は確立され,あらせ衛星単独観測に加え,衛星-衛星間,衛星-地上観測網間の協調観測により,内部磁気圏における電磁サイクロトロン波による高エネルギー電子の加速・散乱機構に関する研究成果が多数上がっている.あらせ単独観測の成果としては,磁気音波からイオンを介して電磁イオンサイクロトロン波が励起される過程を観測的にはじめて実証する(Asamura et al. (2021))重要な成果が上がっている.数ナノ秒で立ち上がる必要のある、高速アンプをチップ内に実現できており、小型の簡易型真空チェンバ実験でもその性能を確認するところまで到達している。その入力レベルと立ち上がり時間のばらつきについても、許容できるレベルであり当初の目的性能が実現できている。ピーク材を利用した小型軽量低エネルギーイオン・電子センサーについても、一部想定外の部分はあったものの、ほぼ想定した通りの性能が実現できており、さらにこ予想外の部分についても解決策を講じたアナライザーを設計・製作することが出来たため。
斜め伝搬コーラス波による高エネルギー電子のピッチ角散乱過程について理論的な解析を進めてきている。同時に、EMIC波動によるMeV電子のピッチ角散乱過程のグリーン関数データベースの作成作業を進めている。これに基づきコーラス波動、プラズマ圏ヒスおよびEMIC波動が共存する場合の放射線帯モデリングを実現することを目指す。斜め伝搬コーラス波およびEMIC波動によって極域大気に降下する電子フラックスを定量的に評価することが今後の課題である。さらに超低周波のULF波動がコーラス波動およびEMIC波の生成過程に与える影響について、観測データの解析に基づいて理論的な検討を進め、ULF波動による包括的な放射線帯変動について理解を深める。これまでに見いだされたジャイロ位相の非一様性について、異なる条件や領域でのより多くのイベントを解析し、非線形波動粒子相互作用の発現条件について、既存の理論と詳細に比較を行い整合性を検討する。また、内部磁気圏への応用に留まらず、広く宇宙プラズマ環境における非線形波動粒子相互作用の普遍性、重要性について実証的研究を行う。「あらせ」衛星の観測は順調であり,地磁気活動が活発化し始めたことから,新たな観測的知見を期待できる.また,観測データが蓄積され,衛星軌道における現象が概観できてきたことから,これまでの太陽活動極小期における統計的特性のみならず,太陽活動度に応じた現象の統計的特性を解析することにも挑むこととなる.これまでに引き続き,膨大な観測データから効果的に対象となる現象を抽出する手法などの検討も実施している.WPIAに関して、粒子捕捉用チップと、大型真空チェンバー内に配置した、粒子ビーム源と粒子センサーとを組合わせ、実際に粒子を検出したセンサー信号を、チェーンバーの外部に設置したチップでの計測を行い、性能の最終確認を行う。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (27件) (うち国際共著 9件、 査読あり 27件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 9件、 招待講演 9件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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