研究実績の概要 |
ほぼ半世紀近く昔のシャープレスの不斉酸化反応は、アリル位のオレフィンの不斉エポキシ化反応であった。チタン触媒を用い、当時は考えられないほどの高い不斉収率を実現し、その後、様々な天然物の合成に用いられた。私共はその後、ホモアリルアルコールの不斉合成を目指し、特にジルコニウム触媒を用いることで、非常に高い不斉合成に成功した。また、さらにはハフニウム触媒を用いて、一級アルコールばかりでなく、2級や3級アルコールの不飽和オレフィンの酸化に成功した。一方ではタングステン触媒を用いることで、不斉エポキシ化ばかりでなく、その後の開裂反応も不斉で進行することを発見し、これによって99.9%の光学純度でキラル生成物を得ることができた。特にアミノ基を求核剤に用いることで様々なヒドロキシアミノ化合物の一般的な不斉合成に成功した。 さて、以上の合成で未踏の基質はビスホモアリルアルコールの不斉酸化反応である。幸いなことに、私共の開発したチタン触媒はこれに非常に有効であり、様々な置換形式のオレフィンに非常に高い不斉収率でエポキシ化を進行させることに成功した。現在、先に開発したベータ・ガンマ不飽和カルボン酸の不斉酸化とともに、出版に向けて、データの整理を行っている。 一方、チタン触媒はエステル交換反応の優れた金属触媒でもあるので、1,2―, 1,3―, 1,4―ジオールの選択的なエステル化反応を開発しており、これも非常に良い結果を得ている。一般に、これらの変換反応には酵素反応が有効であるが、有機触媒反応では必ずしも良い手法がなく、本法は今後大きな注目を得る反応に成長すると考えている
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