研究課題
本研究では、創薬における心臓への副作用を定量的に評価することを目的として、自由に拍動する心筋細胞シートの活動電位を定量的に計測する手法の確立する研究を進めてきた。実際にナノメッシュセンサを用いることで、ダイナミックに拍動する心筋細胞シートの表面電位の計測に成功している。さらに、ナノメッシュセンサのアクティブ化に成功し、物質透過性と高い生体適合性を兼ね備えつつ、伸縮自在で、高空間分解能・高時間分解能で計測できるナノメッシュセンサの開発を実現した。本年度は、薬効試験における定量的な評価に向けて、計測した表面電位の解析手法を確立し、表面電位、拍動数に加えて、細胞外電位持続時間の定量評価を推進した。また、心筋細胞の電気信号と伸縮力を同時に計測可能な柔らかいセンサを実現することで、ダイナミックに拍動する心臓モデルにおける興奮・収縮連関に関わる各指標を世界で初めて定量的に評価することに成功した。さらに、単一細胞より小さい素子サイズ(5×5 μm2)の有機電気化学トランジスタのマトリックス化を推進し、極めて低い電圧で細胞内電位を計測することに成功した。従来は、細胞内電位を計測する手法として、パッチクランプ法が用いられてきたが、侵襲性が大きいという課題とともに多点化が困難であるため、心筋細胞シートの活動電位の分布を計測することには適していなかった。一方で、電気穿孔法のように細胞に電気パルスを印加し、細胞内電位を計測する手法も提案されているが、電界集中で大きな印加電圧が必要であるため、細胞への侵襲性やプローブ電極の構造への制限が課題とされていた。そのため、細胞の生理電気的な信号の分布においては、多点電極の培養皿による表面電位分布といった細胞外信号のみに頼っていた。本研究により、心筋細胞の細胞内電位の分布を、1 V以下の低い電気信号のみで、高時間分解能で計測することが初めて可能になった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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巻: - ページ: -
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