研究課題/領域番号 |
17H06150
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大須賀 公一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (50191937)
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研究分担者 |
石川 将人 大阪大学, 工学研究科, 教授 (20323826)
青沼 仁志 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20333643)
李 聖林 広島大学, 理学研究科, 准教授 (50620069)
小林 亮 広島大学, 理学研究科, 教授 (60153657)
佐倉 緑 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (60421989)
杉本 靖博 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70402972)
石黒 章夫 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (90232280)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | ゾンビ化 / 運動制御 / 陰的陽的制御 / 制御構造 / 振る舞いの源泉 |
研究実績の概要 |
生物は単純な脳神経系しかもたない種であっても,十分に高度な適応的行動を見せる.このような振る舞いは,脳・身体・環境の相互作用から生み出されていると考えられているが,依然としてその発現機序は明らかではない.この本質の理解のためには,脳・身体・環境の相互作用のミニマルなセットに着目し,そこに内在する制御構造を抽出することが必要である.そこで本研究では,生物の上位脳機能を生きたままで段階的に阻害(ゾンビ化)した上で行動観察するという新奇な方法論を提案する.これによって同定された制御構造に基づき,劇的にシンプルな制御則で実世界に適応可能な人工物を開発する.本目的を達成するために本研究では次の三つの主題を実施する.主題1:コオロギの「ゾンビ化手法」を確立する.主題2:「ゾンビコオロギ」の制御構造を同定する.主題3:同定された「源泉」を実現する実証用ロボットを試作し本研究の妥当生を実験的に検証する. 2017度は,重点的に「実験環境の整備」と「コオロギのゾンビ化の基礎検討」を行った.それを受けて2018年度は,具体的な実験装置の製作を開始した.特に,本研究において基礎となる「コオロギのゾンビ化」を実現するための「ゾンビ化システム」の構築を行った.その結果,基本構造は完成し,マニュアル操作をある程度含むが,微細な作業を自動的に実施できるシステムの試作が完成した.同時に,ゾンビ化のための薬剤カクテルの定量的な同定,および,コオロギの頭部マップをつくるための3Dスキャン画像の処理方法について基本的設計を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,コオロギの脳に薬剤を注射することで脳機能と身体運動を分離させる手法,ゾンビ化がコア技術になる.それに対して,本年度は,昨年度の結果を受けて,その処置を支援するゾンビ化支援システムの概念設計と基礎検討用試作機の完成度を高めたので,その目的は達成されたと言える.また,どのような薬剤カクテルを脳に投与すればいいかを探るために,本研究の規範となる自然界に生息するカリバチの毒の成分を調査し,それと類似した薬剤のレシピができたのでその内容を確定した.そして,コオロギの頭部の内部構造マップを構築する準備が整ってきた.以上から,本年度は当初計画にそった成果がおおむね得られたと言える.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は常に,主題1:コオロギの「ゾンビ化手法」を確立する.主題2:「ゾンビコオロギ」の制御構造を同定する.主題3:同定された「源泉」を実現する実証用ロボットを試作し本研究の妥当生を実験的に検証する.という3つの主題をパラレルに進めている.その中で次年度は,前年度で得られた成果(ゾンビ化支援システムの基礎試作機とゾンビ化のための薬剤レシピの第一次試作,頭部3D画像の処理方法の確定)をベースに,よりそれぞれの課題の完成度を高める.さらに,ゾンビ化コオロギの運動データを取得するためのトレッドミルシステムを完成させ,その上での歩行実験を行う.それと同時に,ゾンビ化コオロギが完成したことを想定して,コオロギ内の制御構造の同定はどのようにすればできるのかを理論的に検討する.
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