研究課題/領域番号 |
17H06152
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
宝野 和博 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 拠点長 (60229151)
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研究分担者 |
木村 昭夫 広島大学, 理学研究科, 教授 (00272534)
三浦 良雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (10361198)
桜庭 裕弥 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (10451618)
佐々木 泰祐 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主幹研究員 (30615993)
中谷 友也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, 主任研究員 (60782646)
田尻 寛男 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 研究員 (70360831)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | ハーフメタル / CPP-GMR / スピン分極 / 規則合金 |
研究実績の概要 |
単結晶CPP-GMR素子においては挿入層の有無や、ホイスラー合金の規則状態に依らず、MRの温度依存性が常に大きいことが見いだされた。この結果は、MRの大きな温度依存性は、ホイスラー合金の組成に由来した界面の問題に起因する可能性が高く、終端状態や規則状態の改善のみでは解決し得ないことを示唆している。応用を見据え多結晶素子の開発を進めた。AgとInZnOの同時成膜により、AgInZnO(AIZO)を中間層とするCPP-GMR素子を作製した。その結果、多結晶素子として過去最高となる60%を超えるMR比を室温で実現した。TEMによる微細組織観察の結果、AIZOが前駆体となり、アニール処理によってMnZnOマトリックス内にAgInを電流狭窄パスが作製され、ホイスラー合金ハーフメタル層とのスピン抵抗整合が得られた結果であることが解明された。 第一原理計算を有限温度に適用し、スピン分極率の温度依存性を調べた。Co2MnSiのスピン分極率は、L21規則構造に対しては室温300Kで3割程度、B2構造に対しては5割程度のスピン分極率の減少が見られることを明らかにした。この有限温度におけるスピン偏極率低下は、Coを主成分とする少数スピン伝導バンドの温度による増大が主な要因であることが分かった。 広島大でのスピン・角度分解光電子分光測定のため真空輸送チャンバーを用い、ホイスラー合金についてスピン分解光電子分光測定(SARPES)を測定した。CFGG/Ag積層薄膜のフェルミ準位観測を行った結果、CFGG/Ag/CFGGの電子透過率の第一原理計算と整合する像が観測された。この手法により、界面挿入層によるバンド整合の改善効果が可視化できれば、GMR素子の特性向上に活用されることも期待できる。 SPring-8における異常分散XRDをCo2MnGa等のワイル半金属、Mn2CoAl,CoFeVSi等のスピンギャップレス半導体ホイスラーなどに展開し、一般的なXRDで観測不可な不規則状態の定量評価に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ホイスラー合金系CPP-GMRにバルクと界面のスピン分極率がどのように寄与するかを解明し、それらの温度依存性を測定することにより、室温でのCPP-GMRの低下の原因を明らかにした。これまでのCPP-GMR, 非局所スピンバルブ(NLSV)を用いた実験とAg/ホイスラー合金界面のXMCD測定により、バルクならびに界面でのスピン分極率と磁気モーメントの温度依存性が明らかとなってきた。これに加え、第一原理計算とMCD-HAXPESやAXRD測定により、界面の電子構造と結晶構造の関係、磁気抵抗素子の大きな温度依存性の原因が明らかになりつつある。より実用的な観点で並行して研究を進めている多結晶素子については、AgInZnO 中間層の開発によって大きなMR比が得られており、ナノ構造解析により電流狭窄層の存在が明らかになった。以上により一定以上の成果が挙がっている。CIP磁気抵抗素子においてもCoFeとbcc-Cuの組み合わせによって大きなMRが得られることを見出している。
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今後の研究の推進方策 |
ハーフメタルホイスラー合金の課題の解決し、室温デバイス特性向上を目指した取り組みに対するエフォートを高め、研究を遂行していく。単結晶CPP-GMR素子については第一原理計算を頼りとし、界面の多数スピン電子の透過率と磁気モーメントの交換スティフネスを高める新規ハーフメタル材料やスペーサー材料の探索を進めていく。レーザー光及び放射光を用いてた電子分光実験を進め、界面バンド分散がスピン依存輸送に与える影響を基礎観点から解明する試みも合わせて進めていく。実用面で重要となる多結晶素子に関しては、HDD用ヘッドへの応用を見据え、実用的な性能の実現を目指し特性向上を図る。CIP磁気抵抗素子が高感度磁気センサーへの応用有望であることがわかったので、材料や素子構造の最適化による感度向上を目指す、
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備考 |
宝野和博 日本金属学会「村上記念賞」受賞 2019年9月 宝野和博 第61回本多記念賞受賞決定 2020年1月
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