研究実績の概要 |
前年度から開始した松崎研究室との共同研究は順調に進捗し、マーモセットにおける高次認知課題を用いた初期の成果が得られ、1年以内には論文発表の見込みである。ヒトを被験者とした渡部博士のfMRI解析も順調に進捗し初期の成果が得られつつある。また、ArchTを用いる抑制的光遺伝学的介入の新規方法を論文発表した(Setsuie et al., iScience 2020):in vivoにおいては、in vitro における最適波長である532nmではなく、594nmのレーザー光照射が最も広範囲の大脳皮質を活性化できることを見出した。この結果は、サルの光遺伝学実験において、オプシン分子活性化波長とヘモグロビン等の脳内吸光分子の吸収波長の両方を最適化することが重要であることを示している。 本研究において既に同定した大脳前頭葉の複数領域は、記憶の種類毎に特異的に機能するメタ記憶読み出し領域であるが、これらから統一的な確信度判断を導くプロセスの解明のためにマカクサルを用いたfMRI解析を進めてきた。その結果、大脳後下頭頂葉(pIPL)が、読みだされたメタ記憶情報を統合してメタ判断を下す中心部位であることを見出した。更にpIPLから背側前帯状皮質(dACC)へと送られる信号が最終的な行動へと導くことも明らかになった(Miyamoto, Setsuie, Miyashita, in revision 2021)。 以上のように2019年度までの実験・研究は順調に進捗した。しかし、2020年2月以降のCOVID-19の影響は大きく、集中的なまとめ実験を行うべき2020年度の研究遂行が困難に直面し、2021年度においても研究遂行の為の十分な実験研究環境を整備することが困難であると考えられた為、2021年度における本基盤(S)研究費投入は妥当性を欠くと判断し、2021年度研究費申請を辞退することとした。
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