研究課題
昨年度の研究(リサイクリングエンドソーム膜PSによるHippo/YAP経路の制御、細胞質DNA応答分子STINGのオルガネラ膜脂質による制御)に加え、今年度は、初期エンドソームに同定される新規シグナル分子の解析を行った。まず、当初の計画通り、初期エンドソーム膜脂質近傍タンパク質を同定するため、初期エンドソームに特異的に存在する脂質PI(3)Pに結合するFYVEドメインと、BirA*もしくはAPEX2をタンデムにつなげたコンストラクトを安定発現する細胞を作製し検討を行った。その結果、今回検討した初期エンドソーム脂質PI(3)Pのプローブに関しては、BirA*に比べAPEX2の方が特異的に初期エンドソームをビオチン化できることが判明した。そこで、PI(3)PプローブとAPEX2を組み合わせた手法により、初期エンドソーム近傍タンパク質を質量分析にて網羅的に解析した。DPPCによるTLR4シグナルの活性化に関しては、DPPCのLPSによるTLR4活性化に対する影響を検討した。その結果、DPPCはLPSによるTLR4の活性化を相乗的に増強することが明らかになった。またこの相乗効果を他のTLRタンパク質についても調べたところ、DPPCはTLR4のみならず、TLR2の活性化も促進した。一方でTLR7, 8, 9の活性化に対してはDPPCの増強効果はなかった。このことから、DPPCはすべてのTLRタンパク質の活性化を促進するのではなく、細胞膜に局在するTLRタンパク質に選択性があることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、初期エンドソーム近傍タンパク質を同定することに成功した。また、ゴルジ体膜上で活性化するSTINGに関しても、ゴルジ体/小胞体膜上での活性制御機構を明らかにし、本研究の成果として報告することができた (Ogawa & Mukai et al., BBRC 2018; Hansen et al., PNAS 2018) 。DPPCによるTLR4の活性化に関しても、DPPCが細胞膜上においてTLR4活性化に必要な膜ドメインを形成している可能性を見出している。以上の理由から、本研究は順調に進展していると判断した。
当初の計画通り、近傍蛋白質ビオチン化法(BirA*法)と特異的脂質認識プローブを駆使し、細胞内オルガネラ膜(特に初期エンドソーム、ゴルジ体)における局在分子、相互作用分子の網羅的な同定を進める。また、本研究の軸となるオルガネラ特有の脂質をターゲットとしたBirA*法/APEX2法を用いたアプローチではないものの、マスト細胞における、研究代表者がこれまでに蓄積してきた予備的結果に基づき、小胞体上の酸化リン脂質の分解を介した脱顆粒シグナル制御の解析を行う。
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