• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実績報告書

アミノ基キャリアタンパク質を介する生合成機構の解明と二次代謝産物構造多様性の拡張

研究課題

研究課題/領域番号 17H06168
研究機関東京大学

研究代表者

西山 真  東京大学, 生物生産工学研究センター, 教授 (00208240)

研究分担者 富田 武郎  東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (50447364)
研究期間 (年度) 2017-05-31 – 2022-03-31
キーワードアミノ基キャリアタンパク質 / 生合成 / 二次代謝産物 / マレイマイシン
研究実績の概要

①アザビシクロ環含有アミノ酸への生合成初期課程は、DADHの末端水酸基がまずVzb21によってスルホン化された後、αアミノ基がVzb12によってアセチル化され、その後、スルホン化によって活性化された末端水酸基とδアミノ基の間でアジリジン環構造を有するアミノ酸がVzb10/11により形成され、その後で保護基であるアセチル基が除去されると推測した。本年度は、DADHを基質として、Vzb21,12の連続反応、それにVzb10/11,さらにはVzb13を加えた系でin vitro反応を行った。その結果、予想される分子量を持つ化合物を生成することに成功した。
②s56-p1のN-N結合生成に関わるSpb40の機能として、MetRSドメインによってグリシンを活性化し、CupinドメインでそれとN6-OHリジンと縮合させ、生じたエステル中間体の形成を経て、N-N結合を形成することが示唆された。各ドメインの活性中心を変異した変異酵素は、活性を示さなかったが、それらを同一細胞に入れた場合は活性が検出されたことから、MetRSドメインが他のサブユニットのCupinドメインと相互作用し活性を示すことが示唆された。
③タイプIIAmCP遺伝子クラスターが、生合成機構未解明のマレイマイシンの生合成を担うことが明らかとなった。マレイマイシンは、AmCPに付加したグルタミン酸末端がセミアルデヒドになった後、未知の機構によりC3化合物の付加、アミノ化が進行し、最後に脱炭酸することにより生合成されるというその概略が明らかになった。
④その他のAmCPクラスの解析
これまで、不溶性タンパク質としてしか得られなかった2つのタンパク質を大腸菌で可溶性タンパク質として調製することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで未知である酵素が全く知られていない反応を行うことから、アザビシクロ環生合成におけるアジリジン環含有アミノ酸の合成機構の解明には少し手間取るのではないかと心配したが、タンパク質の調製、さらにはin vitroの反応での生成物の確認が出来るまでに持ってくることが出来た。アジリジン環のアザビシクロ環の変換には、NRPSであるVzb7が関わることが推測された。各種遺伝子破壊株から単離された化合物のMS解析から、機能未知タンパク質Vzb5/6がVzb7のPCP上でアジリジン環含有アミノ酸のα-β不飽和化を行うことが示唆された。興味深いことにstand alone PCPであるVzb8の遺伝子破壊によっても、同α-β不飽和アミノ酸が蓄積することから、これまで例を見ないVzb7のPCPからVzb8(PCP)へのアミノ酸の移し替え機構の存在が示唆される。Vzb5/6による不飽和化も含めて、未知の興味深い機構が山積しており、その機構解明により、新たな合成生物学の道が開けると期待している。
Ficellomycinの環修飾および最終段階のジペプチド生成に関しては、in vitro再構成に成功している。生合成中間体を大量調製し、化学構造を決定を試みているところであり、近々学術誌に論文を投稿できると考えている。
マレイマイシン(MM)生合成に関しては、ほぼ全ての遺伝子破壊株の作製に成功し、その代謝産物の解析から、C5からC7(MM)の炭素鎖伸張は、まずC3ユニットが付加し、それが脱炭酸するという全体像が見えてきた。幾つかの生合成中間体の単離が可能であり、未知の生合成経路の解明は近いと考えている。
DADH生合成遺伝子に3つの遺伝子のみが付加された(転写因子と排出体を除く)遺伝子クラスターを見出し、それら全てのタンパク質の調製が可能となった。どのようなものが合成されるのか、in vitro、in vivoで解析していく。

今後の研究の推進方策

研究の推進方策の大きな変更はない。アジリジン環の生合成を担う酵素のin vitroの評価系自体は確立できた、今後は化合物の構造決定を行う必要がある。これは、有機合成化学的に基質を調製し、それを用いた反応、酵素の結晶構造解析を行う予定である。
Vzb10/11、Vzb5/6、Spb40など全く新しい反応を触媒する酵素が研究対象となっており、その構造情報は反応機構の解明に不可欠である。これらのうち、Vzb10/11、Spb40については、タンパク質の調製に目処がついている。これらの結晶化を精力的に行うとともに、必要に応じて単粒子解析を用いた構造解析も行っていく。
その他、新規化合物については、生合成経路だけでなく、その最終産物の生物活性も他機関への研究強力を仰いで検討していきたい。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 5件、 招待講演 5件)

  • [雑誌論文] An ornithine ω-aminotransferase required for growth in the absence of exogenous proline in the archaeon Thermococcus kodakarensis2018

    • 著者名/発表者名
      Zheng Ren-Chao、Hachisuka Shin-ichi、Tomita Hiroya、Imanaka Tadayuki、Zheng Yu-Guo、Nishiyama Makoto、Atomi Haruyuki
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 293 ページ: 3625~3636

    • DOI

      10.1074/jbc.RA117.001222

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discovery of Unprecedented Hydrazine-Forming Machinery in Bacteria2018

    • 著者名/発表者名
      Matsuda Kenichi、Tomita Takeo、Shin-ya Kazuo、Wakimoto Toshiyuki、Kuzuyama Tomohisa、Nishiyama Makoto
    • 雑誌名

      Journal of the American Chemical Society

      巻: 140 ページ: 9083~9086

    • DOI

      10.1021/jacs.8b05354

    • 査読あり
  • [学会発表] Biosynthesis and modification of azabicyclo ring-containing compounds2019

    • 著者名/発表者名
      Makoto Nishiyama
    • 学会等名
      2nd China-Japan Symposium on Natural Product Biosynthesis
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] アザビシクロ環含有ジペプチドficellomycinの生合成機構に関する研究2019

    • 著者名/発表者名
      黒澤菫、松田研一、長谷部文人、富田武郎、葛山智久、西山真
    • 学会等名
      2019年度日本農芸化学会大会
  • [学会発表] 超好熱・好酸性古細菌Sulfolobus acidocaldarius由来のホモクエン酸合成酵素の構造・機能解析2019

    • 著者名/発表者名
      鈴木智大、富田武郎、葛山智久、西山真
    • 学会等名
      2019年度日本農芸化学会大会
  • [学会発表] Maleimycin Biosynthesis is mediated by Type II Amino-group Carrier Protein in Streptomyces sp.2019

    • 著者名/発表者名
      Muhammad Prima Putra, Kenichi Matsuda, Takeo Tomita, Kazuo Shin-ya, Tomohisa Kuzuyama, Makoto Nishiyama
    • 学会等名
      2019年度日本農芸化学会大会
  • [学会発表] Amino group carrier protein, a new platform in primary and secondary metabolite biosynthesis2018

    • 著者名/発表者名
      Makoto Nishiyama
    • 学会等名
      2nd EFB-AFOB Joint Symposium on Applied Biocatalysis
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Amino-group carrier protein-mediated biosynthesi of primary and secondary metabolites2018

    • 著者名/発表者名
      Makoto Nishiyama
    • 学会等名
      2018 Sino-Japan Symposium on Biocatalysis and Biotransformation
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] ヒドラジンを生合成する酵素システムの発見2018

    • 著者名/発表者名
      西山真
    • 学会等名
      第453回ビタミンB研究協議会
  • [学会発表] Amino-group carrier protein, a new key machinery contributing to expansion of structural diversity of secondary metabolite2018

    • 著者名/発表者名
      Makoto Nishiyama
    • 学会等名
      1st Japanese-German Symposium on Biosynthesis and Function of Natural Products
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Discovery of unprecedented lysine biosynthesis using a carrier protein in Thermus thermophilus2018

    • 著者名/発表者名
      Makoto Nishiyama
    • 学会等名
      International Workshop on 50th anniversary of Thermus thermophilus discovery
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 放線菌の生産するアザビシクロ環含有化合物の生合成機構に関する研究2018

    • 著者名/発表者名
      黒澤菫、西山真
    • 学会等名
      第9回醗酵学フォーラム

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi