研究課題/領域番号 |
17H06169
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
浅野 泰久 富山県立大学, 工学部, 教授 (00222589)
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研究分担者 |
山口 拓也 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00748527)
日比 慎 富山県立大学, 工学部, 准教授 (30432347)
松井 大亮 富山県立大学, 工学部, 助教 (40748513)
中野 祥吾 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (80748541)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | ヒドロキシニトリルリアーゼ / 可溶性変異 / 遺伝子発現 / 節足動物 / 酵素 |
研究実績の概要 |
課題1 1. 大腸菌で不溶性にしか発現しないβシートが豊富な酵素として微生物のPeptide: N-glycosidase Fを選択しホットスポット(Asn17)を見出した。2. 7種類の酵素遺伝子のTat-Split法による可溶性発現を試み、新しく3種類の可溶性変異体を見いだし変異部位を特定した。3. 「α-ヘリックス則」とINTM-SAlignと効率的に連結できるようにした。4. 他大学と可溶性発現を検討した。5. 多くのヤスデ由来のHNL構造と可溶性発現への影響を検討した。5. 本法の有効性の逆証明のため、可溶性酵素のINTMS-Alignにより不溶性化変異をデザインした。6. INTMS-Alignの出力結果と立体構造に基づく安定化変異点探索ソフトウェアPyRosettaを融合し、新たな可溶性変異点探索ツールを開発した。MeHNLをモデルとして探索を実施し、Met103Leuに加えてLys176Pro, Lys199Pro, Lys224Proについても可溶性ホットスポットとして予測できることが判明した。 課題2 1. 2017年秋に大発生したヤスデDNAについてゲノム解読作業を継続して行った。2. 大腸菌では遺伝子発現が認められないヤスデ酵素について、Pichia pastorisに対してコドン最適化を行い、ジスルフィドイソメラーゼを共発現させたところ、遺伝子発現が認められた。3.反応機構からHNLが新規なストレッカー反応の触媒に最適と考え、研究室が有する植物由来HNL7種とヤスデ由来HNLでアミノニトリルの分解反応と合成反応を検討した。2-アミノ-3-フェニルプロパンニトリル、ピロリジン-2-カルボニトリル、2-メチルアミノ-2-フェニルアセトニトリルを有機合成し、分解及び合成活性測定した結果、いくつかのHNLで2mPANの合成を触媒することが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1 1.β-シート構造においてもα-helix ruleと同様にアミノ酸残基の親水性・疎水性が重要な因子であると考えられる。2.Tat-split-GFP法では、多様な可溶性変異体が見いだされる。例として、βターン付近やα-ヘリックス付近のアミノ酸残基が置き換わっていた。3.α-ヘリックス構造の親水性面と疎水性面の判別を自動で行うことのできるエクセル形式のファイルを作成できた。4.他大学でも、可溶性発現の改善が見られた。5. INTMS-Alignにより不溶性化変異を予測できた。6. 可溶性ホットスポット探索に関して新しくタンパク質立体構造ベースで変異点探索が可能となるなど、応用の幅が拡がった。 課題2 1. ヤスデのゲノムシークエンスデータをアッセンブルし、112のスカフォールド (N50 16.6 Mbp, Total size 148.7 Mbp) からなる、ドラフトゲノムを得た。また、ヤスデ各組織のRNA-seqデータを利用して、ヤスデゲノム上の遺伝子を推定し、13235遺伝子を得た。ヤスデのシアン化水素発生に関与するChuaHNL遺伝子は多くのChuaHNL-like遺伝子とクラスターを形成していたことから、ChuaHNLの祖先遺伝子がゲノム上で多重化していく過程でHNL活性を獲得したと推察された。2. まず、大腸菌では遺伝子発現が認められなかったヤスデ酵素について、酵母Pichia pastorisに対してコドン最適化を行い、ジスルフィドイソメラーゼを共発現させたところ、酵母での遺伝子発現が認められた。3. 世界で初めて酵素でアルデヒドからアミノニトリルを合成することを明らかにした。様々なアミノニトリルを用いることで、アミノニトリルを合成しやすいHNLとの組合わせを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
課題1 1. β-シート構造中の可溶性変異について、新しい法則性と合理的説明法を見出すことが必要である。Tat-Split法の有用性が示された一方で改善の余地も残されている。今後は本プロトコルの改良を行い、本スクリーニング法の適用範囲を広げる。2. INTMS-Align との効率的な連結のため、さらに改良を行う。3. 良好な結果を得ている部分については、さらに可溶性発現を向上させるためのホットスポットの解析を行う。4. 各大学から報告をまとめ、変異部位の解析を行う。実験分担を再考する。5. ヤスデ由来のHNLの大量生産を行い、応用範囲を広げる。6. 新たにモデルタンパク質を選択し、さらに本手法の有効性を検証する。7. 開発したHiSol2法を用いて、不溶化タンパク質を可溶化させる実験を実施する。具体的にはRhodococcus由来L-amino acid oxidaseなどに本手法の適用を行う。 課題2 1. ヤスデゲノム解読作業からヤスデのシアン代謝やその他の特徴を見出す。ChuaHNL-like遺伝子の機能解析を行う。また、マンデロニトリルの生合成に関与するシトクロムP450の同定を行う。2. ヤスデ由来HNL類の結晶構造解析を進め、有用光学活性シアノヒドリン合成に適用する。3. アミノニトリル自体が不安定な化合物のため、ニトリラーゼやニトリルヒドラターゼとカップリングさせることで、より速やかにアミノニトリルをアミノ酸やアミドに変換させる。構造情報のあるHNLに対し、基質認識ポケットに変異を導入し、より立体選択的に作用する酵素に改変する。
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