研究課題
1. 抗酸化剤に由来する短寿命分子種の同定・検出:IgMリガンド生成に関与するポリフェノールオキシダーゼ処理カテキンの構造に関する化学的解析を行った結果、カテコール型カテキンとピロガロール型カテキンが共存して生成するベンゾトロポロン環の関与を明らかにした。2. 短寿命抗酸化剤代謝物によるタンパク質の新機能獲得:修飾タンパク質受容およびシグナル伝達経路の解明を試み、カルシウムバイオセンサー分子(YC3.60)をB細胞特異的に発現する遺伝子改変マウスを用いたin vivoイメージングにより、酸化型ビタミンC(DHA)修飾タンパク質投与によるカルシウムシグナルの関与を明らかにした。また、酸化型ビタミンC修飾アルブミンを用い、株化マクロファージ細胞J774A.1の脂質ラフト画分における結合タンパク質としてヒストンタンパク質を同定した。3. 過硫黄分子によるタンパク質パースルフィド化:システイニル-tRNA合成酵素(CARS)が、moonlight活性としてシステインパースルフィド合成酵素(CPERS)活性を有することを明らかにした。CARS/CPERSは、システインを基質としてタンパク質翻訳と共役して新生タンパク質をポリスルフィド化していることを見出した。さらに、CARS/CPERS由来の活性硫黄分子種がミトコンドリア電子伝達系に関わることを発見した。4. 短寿命分子種による細胞内タンパク質機能制御:新たにユビキチンプロテアソーム系の中で、小胞体ストレス分解(ERAD)に関わるE2酵素のUBE2D1が新規NO標的であることを発見した。細胞レベルで検討したところ、UBE2D1はNOドナーの濃度依存的にS-ニトロシル化されることを確認した。また、UBE2D1が介在するタンパク質ユビキチン化もNOによって減弱されることを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
(1) 抗酸化剤に由来する短寿命分子種として新たにベンゾトロポロン環の関与を明らかにしたことにより、紅茶成分テアフラビンの健康機能性の手がかりを得ることができた。タンパク質のgain-of-functionとして、タンパク質リジン残基のピロール化によるapoEリガンド活性の獲得、フェロトーシスにおける脂肪酸由来短寿命活性種の検出などに成功しており、期待通りの成果が挙がっている。また、自然抗体だけでなく、細胞膜タンパク質としてヒストン(プラスミノーゲン受容体)を新たな相互作用タンパク質として同定しており、ビタミンCやその他の抗酸化剤の本質的機能の発現機構として、新しい概念を提案できるものと思われる。(2) 過硫黄分子によるタンパク質パースルフィド化において、システインパースルフィドがミトコンドリアにおけるエネルギー産生の制御に関わることを明らかにし、ミトコンドリアの硫黄依存型エネルギー形成機構の解明に関する知見をさらに深めることができ、研究は順調に進展していると評価できる。(3) PDI活性中心Cys残基へのスルフヒドリル化修飾という新規な現象を発見でき、さらにDNMTのS-ニトロシル化制御に関する知見はこれまでに報告がなく、本プロジェクトにおける成果である。
1. 抗酸化剤に由来する短寿命分子種の同定・検出:テアフラビンの主要骨格であるベンゾトロポロン環のモデル化合物を用い、タンパク質との反応に伴うIgMリガンド生成機構を確立する。2. 短寿命抗酸化剤代謝物によるタンパク質の新機能獲得:酸化型ビタミンC (oxVC)修飾アルブミンの細胞膜結合タンパク質としてヒストンタンパク質を同定したことを受け、oxVC修飾アルブミンの抗炎症機能の可能性について検討する。3. 過硫黄分子によるタンパク質パースルフィド化:特異的蛍光プローブ(SSP2、SSP4、PSP-3等)を用いた細胞内活性硫黄分子イメージング解析を試みる。4. 短寿命分子種による細胞内タンパク質機能制御:NO標的タンパク質として見出したDNAメチル化酵素であるDNMTに関し、NOによって酵素活性が負に調節されることを明らかにしているが、今後変異体を用いた解析により標的システインの同定を試みる。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 8件、 招待講演 15件)
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