研究課題/領域番号 |
17H06170
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内田 浩二 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (40203533)
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研究分担者 |
赤池 孝章 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20231798)
上原 孝 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00261321)
安達 貴弘 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50222625)
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研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
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キーワード | 短寿命活性種 / 自然免疫 / ポリスルフィド / タンパク質フォールディング |
研究実績の概要 |
(1) 抗酸化剤を介した自然抗体リガンド生成機構の解析:酸化型ビタミンC修飾アルブミンがヒストンH2Bに結合することでプラスミノーゲン活性化を阻害し、単球・マクロファージの細胞浸潤を抑制することを明らかにし、ビタミンCによる新たな炎症応答調節機構の存在を示した。また、カテキン修飾によってアルブミンはヒストンH2Bおよびマクロファージへの結合能を獲得することが示され、またこれらのポリフェノール類はリジン残基を環状イミン構造に変換し、この酸化修飾構造がヒストンとの結合に関与することが明らかになった。 (2) 短寿命抗酸化剤代謝物によるタンパク質の新機能獲得:アクロレインは脂肪酸由来の短寿命活性種であるが、その修飾タンパク質がB細胞に認識されることを明らかにし、新規なトニックシグナルとしての役割が示唆された。 (3) 過硫黄分子によるタンパク質パースルフィド化:活性硫黄分子種における蛍光イメージング法の開発を行った。また、チロシンおよびヒドロキシフェニル基含有化合物による活性硫黄分子種の安定化作用を明らかにするとともに、高感度かつ高精度の活性硫黄メタボロームの確立に成功した。さらに、新規な活性硫黄ドナーの大量合成法を確立し、抗炎症効果を見出した。 (4) 短寿命分子種による細胞内タンパク質機能制御:生体内パースルフィドドナーによるプロテインジスルフィドイソメラーゼ(PDI)やDNAメチル基転移酵素(DNMT)の修飾様式と活性への影響について検討を行った。また、小胞体ストレス応答(UPR)や遺伝子発現に対する効果を明らかにし、細胞生死との関わりについて解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) タンパク質リジン残基のピロール化によるapoEリガンド活性の獲得、フェロトーシスにおける脂肪酸由来短寿命活性種の検出、抗酸化剤センサーでもあるKeap1のストレス感知機構において新たな知見を得ており、期待通りの成果が挙がっている。 (2)酸化型ビタミンC修飾タンパク質の相互作用タンパク質として細胞膜タンパク質ヒストン(プラスミノーゲン受容体)の同定を基盤に、その相互作用の機能として炎症応答調節機能を証明し、ビタミンCやその他の抗酸化剤の本質的機能の発現機構を確立した。また、ヒストンとの結合に関与する新規な酸化修飾構造として環状イミン構造を同定し、抗酸化剤によるタンパク質修飾機構を確立した。 (3) パースルフィド化タンパク質の検出については、すでに次世代プローブの開発に着手しており、高感度化とともに当初計画どおり進まないための対応策にしている。 (4) PDI活性中心残基へのスルフヒドリル化修飾においては、現在、酵素活性への影響を解析している。また、DMMTのS-ニトロシル化制御に関しては、NOによって誘導される遺伝子に関して次世代シークエンサーを用いた解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)リジルオキシダーゼによるタンパク質酸化修飾において、タンパク質分子上に生じる環状イミン構造の検出・同定を行う。カルノシンなどのイミダゾールジペプチド(IDPs)は抗酸化性ペプチドとしてすでに機能性ペプチドとして市販されるなど、一般的な認知度が広がっている物質であるが、それらのIDPsの抗酸化性の実態を明らかにする。 (2)核タンパク質として知られるヒストンのプラスミノーゲン受容体としての機能、特に炎症応答調節機構との関わりについてさらに掘り下げる予定である。また、組織タンパク質であるコラーゲンの機能改変について検討する。 (3)新しく発見したシステイニル-tRNA合成酵素によるポリスルフィド生成系の役割の解明を中心として、当初計画通り、動物および植物における活性硫黄・ポリサルファ系のユニークな抗酸化制御システムの全貌解明に向けた研究を推進していく。 (4) Cys-SSHなどの低分子パースルフィド種に関しても、シャペロン以外の機能性、例えばチオール基を介した酵素活性のon-off制御の解析により対応する予定である。
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