研究課題/領域番号 |
17H06173
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内山 真伸 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (00271916)
|
研究分担者 |
澤田 大介 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00338691)
|
研究期間 (年度) |
2017-05-31 – 2022-03-31
|
キーワード | 近赤 外光分子技術 / 機能性π分子 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでに申請者らが開発してきた「複雑分子系の理論化学」「複雑分子構造の精密有機合成」「複雑電子系の分光学」を結集・展開し、生命科学・物質科学を光でつなぐ次世代の分子技術・光技術を確立することを目標とする。特に、「近赤外光分子技術」「キラル光分子技術」「吸光・発光分子技術」を3つの柱に掲げ、これらに関する新しい理論の開発、新奇分子群の提案、有機合成手法の開拓、解析手法の開拓、イメージング技術、材料化学への応用などを指向した独創的な基礎学理的・基礎科学的を展開し、10年、20年後を見据えた研究シーズ/分子/概念の創出を目指している。医学・薬学・生物学の分野では、様々な実験や観察をしても決定的な解が得られず、未解決となっている重要課題も少なくない。材料科学・物質科学にもそのような問題は多く存在する。これは、「手に取り出せないもの」「目に見えないもの」が数多く存在することに他ならない生きた細胞の中や複雑分子系で起きている現象を正確に捉える(可視化する・理解する)技術が不足している。本研究の目的は、低分子有機化合物を道具に、光と理論を武器として新たな基礎科学を確立し、たとえば1個1個の生きた細胞の中で起こるさまざまな現象を、生きたまま(非破壊)リアルタイムで、将来的に時間的・空間的・立体電子的に可視化する分子技術の創出を目指している。 一年目であった当該年度では、機能性色素である「オキサボロール」「N-アルキニルピリジン」の新規合成法を確立し、機能性分子としての可能性を示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の過程で、当初の計画にはなかった「プロペランの新規官能基化反応(JACS掲載)」「新規不斉触媒開発(Nature Commun. 掲載)」「C-O/C-N結合を切断しながらポリマーを合成する新規重合法(Nature Commun. に掲載予定)」などの開発にも成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では、申請者らがこれまで培ってきた有機合成化学・理論化学・分光学・元素化学を結集し、光と構造、物性の自在制御を目指す。特にこれまでに多くの知見を有するフタロシアニンやポルフィリン、ローダミン系の色素を中心に理論化学支援によるテーラーメード設計を行い、化合物の安定性を損なわないように、LUMO準位を下げることによって狭いHOMO-LUMOギャップを持つような分子を設計・合成する。さらに、周辺置換基、中心金属などを利用して物性(光電変換材料、近赤外蛍光色素など)に適した性質を付与すると同時に、新たな近赤外色素設計に向けて理論的・物理化学的なアプローチを試みる。芳香属性の起源などに着目しながら、経験と勘に頼っていた従来の合成化学的手法に加えて、積極的に量子化学計算を用いることで、特定の機能を持たせた機能性色素を合理的に設計する独自の分子設計法を開発することに挑んでいる。 本年度の具体的な実施スケジュールとしては、さらなる機能性芳香族/反芳香族クロモフォアの設計と合成、分光スペクトル測定と量子化学計算による評価ならびに応用展開を行う予定である。
|