研究代表者らが発見した直鎖状ユビキチン鎖は現在では刺激依存的なNF-kappaB活性化、プログラム細胞死抑制に寄与する刺激伝達系として世界的に認知されている。さらに、直鎖状ユビキチン鎖を選択的に生成するLUBACユビキチンリガーゼ(HOIL-1L、HOIP、SHARPINから構成される)の機能亢進、低下がガン、自己炎症性疾患と免疫不全の合併疾患の発症に関与することも報告され、臨床的にも注目を集めている。研究代表者は発見、命名者であることを意識し、かつ、サブユニットのコンディショナルKO、Tgマウスを作出しているメリットを生かし、本提案ではその普遍化と疾患研究の基礎を築くことを目指す。具体的には、機能解析を中核に置きつつ、LUBACリガーゼ複合体の構造、活性調節に加え、創薬研究も展開し、直鎖状ユビキチン鎖の統括的理解とLUBACの新機能の解析を進めている。本年度は以下の研究を行なった。 1. LUBACの直鎖状ユビキチン鎖を生成する活性中心はHOIPが有しているが、HOIL-1Lにもユビキチンリガーゼの活性中心が存在する。代表者らはすでにHOIL-1Lのユビキチンリガーゼ活性がLUBACの直鎖状ユビキチン鎖生成能を負に制御することを明らかにしていたが、本年度はHOIL-1Lリガーゼの欠失マウスを用いて個体レベルでも直鎖状ユビキチン鎖生成能を抑制し、同リガーゼ欠損によりサルモネラ菌の感染を抑制できることを示した。 2.代表者らはLUBACは制御性T細胞の機能発現に必須であることを明らかにしてきた。本年度は異なるサブユニットの欠損マウスを用いて解析を進めた。なぜなら、LUBACは欠損するサブユニットの違いによって残存活性が異なるので、表現系が異なる可能性が想定されるからである。その結果、制御性T細胞でLUBACの機能が完全に廃絶すると自己免疫、機能が若干残存していれば自己炎症性疾患様症状と異なる症状を示すことを発見した。
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