研究課題
脳梗塞は発症後の炎症によって増悪化する。申請者らのグループではマウス実験的脳虚血(脳梗塞)モデルを用いて発症後7日以内の自然免疫応答による炎症の拡大スキームを明らかにしてきた。発症後7日以内の脳虚血急性期の自然免疫応答による炎症は大きく理解が進み、自然免疫を標的とした治療法の開発も注目されているが、発症2週目以降の慢性期における免疫細胞の寄与はほとんど知られていなかった。我々は脳梗塞後の慢性機にT細胞が集積することを見出した。細胞を分画したところ集積するCD4陽性T細胞のうちおよそ半数がFoxp3陽性の制御性T細胞(Treg)であった。そこでDEREGマウス(ジフテリア毒素(DT)によってTregを一過性に除去できるマウス)を用いてTregを除去すると神経症状が悪化した。逆にRag欠損マウスやCD3欠損マウスのようなT細胞が存在しないマウスにTregを戻すと神経症状が改善された。これらのことから脳梗塞慢性期には脳内にTregが大量に浸潤し神経症状の改善に重要な役割を果たしていることが示された。抗Foxp3抗体やCD3抗体、抗GFAP抗体で蛍光免疫染色を行ない、慢性期のTregの局在やアストロサイトの活性化の状態を計測した。その結果脳内の制御性T細胞はアストログリオーシスを抑制することで神経修復に寄与することを明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
実験的脳虚血再灌流では、発症2週目以降の慢性期にT細胞が集積することが見出された。細胞を分画したところ集積するCD4陽性T細胞のうちおよそ半数がFoxp3陽性の制御性T細胞(Treg)であった。そこでDEREGマウス(ジフテリア毒素(DT)によってTregを一過性に除去できるマウス)を用いてTregを除去すると神経症状が悪化した。逆にRag欠損マウスやCD3欠損マウスのようなT細胞が存在しないマウスにTregを戻すと神経症状が改善された。これらのことから脳梗塞慢性期には脳内にTregが大量に浸潤し神経症状の改善に重要な役割を果たしていることが示された。脳Tregはアンフィレグリン(Areg)を分泌してアストロサイトの活性化を制御し、結果的に神経症状の回復を助けていることを見出した。このように脳損傷後の慢性的な状況にTregが関与することを世界に先駆けて明らかにした。
(1)実験的脳虚血モデルを用いて制御性T細胞(Treg)を誘導する脳内因子および転写因子を明らかにする。(2) 脳梗塞マウスよりTregを単離し、再脳梗塞モデルや実験的自己免疫性の脊髄炎(EAE)、アルツハイマーモデルの抑制効果を調べる。またEAEやアルツハイマーモデルのにおける脳内Tregの解析を行う。(3) 浸潤TregのT細胞受容体(TCR)およびその抗原を同定する。TCR遺伝子のクローニングは完了し、現在脳抗原との反応を調べている。BCR遺伝子のクローニングも進行中である。今後抗原の同定に向けて実験を進める。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Nature
巻: 565 ページ: 246-250
10.1038/s41586-018-0824-5
nt Immunol.
巻: 31 ページ: 361-369
10.1093/intimm/dxz031
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/medical_info/science/201903_02.html