研究実績の概要 |
腎臓はネフロン前駆細胞、尿管芽、間質前駆細胞という3つの前駆組織の相互作用によって形成される。我々は以前に多能性幹細胞からネフロン前駆細胞の試験管内誘導を報告した。そこで本計画は、遺伝性腎疾患の初期病態を解明するとともに、マウスES細胞及びヒトiPS細胞から尿管芽の誘導法を開発し、間質前駆細胞も誘導して3次元腎臓組織を再構築することを目的とする。 ヒト糸球体の成熟機構解明と病態解析:前年度までに、濾過膜構成遺伝子に変異をもつiPS細胞からネフロン前駆細胞を経由して糸球体を含む腎臓組織を誘導し、その初期病態を再現することに成功した。しかしiPS細胞からの誘導効率が必ずしも安定しなかったため、iPS細胞由来のネフロン前駆細胞を高純度で増幅し、凍結できる方法を開発した。これまでに報告したLIF, FGF, Wnt等に加えてアクチビンの投与が有効であり、毎回iPS細胞から複雑なステップを経て誘導する時間と労力をバイパスできることになった。我々は既にヒトiPS細胞から糸球体ポドサイトを選択的に誘導する方法を確立しており、これらの方法を組み合わせることで、効率的な病態解析が可能になることが期待される。 尿管芽の誘導法の確立:ネフロン前駆細胞誘導法及び2017年度に確立した尿管芽誘導法を遺伝性嚢胞疾患の原因遺伝子を欠失するiPS細胞に適用した。少なくとも前者からは嚢胞形成を再現できた。 間質前駆細胞の誘導:マウス間質細胞の網羅的遺伝子発現解析をもとにマウス胎仔及びES細胞から間質前駆細胞の誘導法を検討した。
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