研究課題
腎臓はネフロン前駆細胞、尿管芽、間質前駆細胞という3つの前駆組織の相互作用によって形成される。我々は以前に多能性幹細胞からネフロン前駆細胞の試験管内誘導を報告した。そこで本計画は、遺伝性腎疾患の初期病態を解明するとともに、マウスES細胞及びヒトiPS細胞から尿管芽の誘導法を開発し、間質前駆細胞も誘導して3次元腎臓組織を再構築することを目的とする。ヒト糸球体の成熟機構解明と病態解析:これまでに、濾過膜構成遺伝子に変異をもつiPS細胞からネフロン前駆細胞を経由して糸球体を含む腎臓組織を誘導し、その初期病態を再現することに成功していた。しかしこれは一人の患者の結果であった。そこで他の変異を持つ複数の患者からiPS細胞を樹立して腎臓組織を誘導したところ、濾過膜の形成が障害され、一例目と同様のメカニズムが示唆された。また通常の培養細胞内では異なる挙動を示す変異もあり、腎臓オルガノイドの優位性が示された。尿管芽の誘導法の確立:これまでに確立した尿管芽誘導法を遺伝性嚢胞疾患の原因遺伝子を欠失するiPS細胞に適用した。ホモ欠失尿管芽のほぼ全て及びヘテロ欠失の一部から嚢胞の再現に成功した。またヘテロ変異を有する患者由来iPS細胞からも嚢胞が形成された。特にヘテロでの嚢胞形成はマウスモデルでは見られないものであり、腎臓オルガノイドの優位性が示された。一方で、嚢胞形成の頻度を上げるには腎臓組織をさらに成熟させねばならないという今後の課題も明らかになった。間質前駆細胞の誘導:マウス間質細胞の網羅的遺伝子発現解析をもとに、マウス胎仔及びES細胞から間質前駆細胞の誘導法を開発中である。今後はその検証とヒトへの応用が課題となる。
2: おおむね順調に進展している
我々が開発した尿管芽誘導法を用いて遺伝性嚢胞疾患の病態再現に成功した。間質前駆細胞の誘導も順調に進んでいる。
誘導した尿管芽の成熟法を開発するとともに、間質前駆細胞の誘導法をヒトでも確立し、多能性幹細胞由来の腎臓高次構造の構築を目指す。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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