研究課題/領域番号 |
17H06231
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
橋爪 秀利 東北大学, 工学研究科, 教授 (80198663)
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研究分担者 |
山村 朝雄 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (20281983)
染谷 洋二 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 核融合炉システム研究開発部, 主任研究員(定常) (20589345)
金 聖潤 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50574357)
遊佐 訓孝 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60466779)
近藤 正聡 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70435519)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 核融合炉 / 消滅処理 |
研究実績の概要 |
核融合炉にマイナーアクチノイドを装填した場合の、核変換量、生成核種、発熱等評価のための中性子輸送解析及び燃焼解析を実施し、特に冷却材の影響に着目して解析を行い各冷却材の特性を評価した。 高レベル放射性廃液(HLLW)の成分・組成を非放射性の成分により模擬した硝酸水溶液中からの発熱性核種(Cs、Sr)の分離のため、含浸吸着材を創製した。その含浸吸着材の基本特性は、吸着材表面に抽出剤の析出は認められず、十分に抽出剤が含浸されていることがわかった。エネルギー分散型X線分光法により含浸吸着材にCs及びSrの吸着を確認した。 また、MA燃料の窒化物は熱出力密度の点からは望ましく、従来の研究よりAn-N(An: U, Pu, Am, Np, Cm)が調製されてきた実績があり、文献調査の結果、Am、Cm等を含むMA燃料、窒化物については熱力学データが極小であり、第一原理CALPHADの支援での相図作成が重要であるとの結果を得た。 さらに、液体重金属冷却材とワイヤースペーサーを採用したMA核変換部の成立可能性を検討した。核変換部の冷却材は低融点(125℃)で中性子減速効果の小さい鉛ビスマス共晶合金(LBE)とし、成立に向けた様々な技術的課題を整理した。ワイヤースペーサー設置環境における構造材料の腐食挙動の解明を重要課題として、LBE強制流動ループやフレッティング(擦過)試験装置を用いた材料健全性に関する実験研究に開始した。 一方、安全性の観点からMA核変換部を核融合炉真空容器(境界)外側に配置する概念案を検討した。大型ポート(1m×2m)の末端に設置する真空閉止板を介して高速中性子を核変換部に導く構造とした。金属製真空閉止板で生ずる核発熱(0.6MW)を徐熱するための冷却チャンネル(37kg/s/port,5MPa)を設計した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安全性を含めた全体の設計の指針が得られてること、MA燃料装荷部の核熱設計により冷却材の違いによるMA変換量・トリチウム増殖比・発熱密度の評価が進んでいること、分離用の吸着材の特性評価と燃料形態の考察が進んでいること、液体金属ループが完成し実験を開始していることから、予定通りに研究が進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
核変換機能が核融合ブランケットの工学的成立性に及ぼす影響をより定量的に評価するための数値解析を実施するとともに、提唱するシステムの核燃料サイクルという観点からの評価を行う。また、現状定量的な値が得られているとは言い難い核融合用溶融塩の熱的な物性値について、数値解析及び実験による評価を実施する。 また、含浸吸着材の吸着性能及び分離性能を模擬HLLWを用いたバッチ吸着試験、小規模な吸着材充填カラムを用いた分離試験等から評価を行い、最適条件を検討する。第一原理CALPHADについても計算方法を京大計算環境機構でのアカウント取得により進める方向である。試験片の詳細な金属組織分析を実施する計画である。 更に、流動による流動励起振動の発生を想定し、ワイヤースペーサー周辺のフレッティング(擦過)現象と腐食現象との相乗効果を調べる計画である。 安全性に関しては、核変換部をポート外部に設置する場合、核融合炉本体とMA核変換部を切り離せるため、安全性確保が比較的容易になるが、最大装荷量の観点で不利である。今後はMA核変換効率向上のために冷却水を軽水から重水に変更してトリチウム増殖比を改善し、ポート寸法の拡大とMA装荷量の増大を目指す。また、トカマク炉のダイバータ下部へのMA装荷概念を検討する。
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