研究課題/領域番号 |
17H06232
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小西 康裕 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90167403)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 高レベル放射性廃液 / 分離技術 / 白金族元素 / モリブデン / バイオ分離 |
研究実績の概要 |
(1)高レベル放射性廃液(HLLW)の放射線環境下(ガラス固化体の製造時線量率 1500 Sv/h)において、バイオ分離剤として通性嫌気性細菌Shewanella algaeの野生株(ATCC 51181)およびパン酵母Saccharomyces cerevisiaeの野生株(NBRC 2044)が、放射線抵抗性(< 線量3000 Gy)を有するとともに、PGMsイオンのうちのPd(II)イオン、またMo(VI)イオンに対する分離・回収能が非常に優れていることを見出した。 バイオ分離剤の放射線抵抗性については、微生物細胞の懸濁液に対してCo60ガンマ線を線量範囲0 Gy~3000 Gyで照射した後、この微生物細胞を模擬廃液に接種することにより、Pd(Ⅱ)イオンおよびMo(VI)イオンの分離機能を調べることによって判定した。なお、Co60ガンマ線の照射実験は、研究代表者の所属機関(大阪府立大学)の附属機関である『放射線研究センター』において実施した。 (2)上記のバイオ分離剤を用いて、HLLW模擬液(2 M 硝酸の強酸性、PGMsとしてPd, Rh, RuおよびMoが各5 mM)からのPGMsイオン分離・回収実験を室温でバッチ法によって行い、PGMs各元素(Pd, Rh, Ru)の分離・回収率に及ぼす各種因子(バイオ分離剤の添加量、操作時間、被曝線量等など)の影響を明らかにした。またMoイオンについても、PGMsイオンの場合と同様にバイオ分離・回収実験を行い、Mo分離・回収率に及ぼす各種因子の影響を定量的に把握した。 (3)研究成果の情報発信 上記の研究結果を取りまとめ、環境資源工学会シンポジウム「放射性物質の分離技術に関する研究・開発における新展開」、日本原子力学会「2018年春の年会」において口頭発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り順調に研究が進み、高レベル放射性廃液(HLLW)の放射線環境下におけるバイオ分離剤として、通性嫌気性細菌S. algae(ATCC 51181)に加えて、パン酵母S. cerevisiaeの有用性を見出すことができた。特に、食品分野の普及品であるパン酵母は、低コスト・大量入手が容易であるので、実用化に打って付けの分離剤であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)高レベル放射性廃液(HLLW)放射線環境下におけるバイオ分離剤としての有用性を平成29年度研究で見出したパン酵母やShewanella属細菌の野生株の他に、その変異株や類縁微生物のPGMsイオン、Moイオンの回収能を測定することにより、PGMsイオンやMoイオンのバイオ分離剤として優れた放射線耐性微生物を探索する。 (2)HLLW模擬液(2 M 硝酸の強酸性、PGMsとしてPd, Rh, RuおよびMoなど各5 mM)を対象にPGMsイオン(Pd(II), Rh(III), Ru(III))分離・回収実験を行い、各PGMイオンを相互分離するために最適な操作条件を検討する。またMoイオンについても、PGMsイオンの場合と同様にバイオ分離・回収実験を行い、PGMsイオン とMoイオンを相互分離するために最適な操作条件を確立する。 (3)PGMs・Moを含む微生物の固液分離方法(バイオ分離操作の下流工程)の開発 実用化操業におけるHLLWの大量処理を想定し、連続方式(HLLW模擬液を連続的に供給・排出)によるPGM・Moバイオ分離・回収操作において、その処理装置内でのバイオ分離剤固定化方法(カプセル封入、担体への付着など)を確立する。この結果を踏まえて、HLLW発生現場やガラス固化現場に持込み可能なモバイル型PGM・Mo分離装置の概略設計を目指す。
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