研究実績の概要 |
(1)高レベル放射性廃液(HLLW)の4種金属系模擬液(初期濃度5.0 mol/m3のPd(II), Ru(III), Rh(III), Mo(VI)を含む2000 mol/m3硝酸溶液)を対象に、安価に大量入手できる「パン酵母の乾燥細胞(顆粒状の市販品)」は、60Coガンマ線照射(< 線量 3000 Gy)の影響を受けずに放射線抵抗性を示すとともに、Pd(II)イオンを選択的かつ高効率に吸着分離できることを見出した。なお、線量 3000 Gy以下のCo60ガンマ線を照射した乾燥パン酵母を、模擬液に直接接種して各種金属イオの分離機能を調べることによって、バイオ分離剤であるパン酵母の放射線抵抗性を判定した。 (2)Pd(II)イオン分離後の3種金属系HLLW模擬液(初期濃度5.0 mol/m3のRu(III), Rh(III), Mo(VI)を含む2000 mol/m3硝酸溶液)に対して、乾燥パン酵母は模擬液中のMo(VI)イオンだけを迅速に効率よく吸着分離できることを明らかにした。 (3)Pd(II)・Mo(VI)イオン吸着前後のパン酵母細胞に対してFT-IR分析を行い、これら金属イオンの吸着に関与する官能基を同定した。その結果、Pd(II)イオン吸着には酵母表層のアミノ基およびカルボキシル基が寄与していること、またPd(II)イオン吸着とは異なる官能基がMo(VI)イオン吸着には関与していることがわかった。 (4)Pd(II)・Mo(VI)イオン吸着分離後の操作として、微小なパン酵母(細胞径5 μm)の固液分離操作は必要不可欠である。そこで、残液からのパン酵母の固液分離を簡便にするツールとして、放射線抵抗性(< 線量 3000 Gy)を有する不織布を用いて、新鮮な乾燥酵母を予め封入した不織布バッグを開発した。
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