研究実績の概要 |
(1)【バイオ分離剤パン酵母によるPd(II)イオン、Mo(VI)イオンの吸着平衡】 パン酵母による硝酸溶液中のPd(II)イオンおよびMo(VI)イオンの吸着平衡実験を行って固液間分配比に及ぼす各種操作条件の影響を定量的に明らかにし、吸着平衡データを固液間分配平衡理論に基づいて解析することにより、硝酸溶液中のPd(II)イオン、Mo(VI)のバイオ吸着機構を解明するとともに、飽和吸着量および分配平衡定数を定量的に把握した。 (2)【高レベル放射性廃液(HLLW)模擬液の大量処理システム】 実用化操業におけるHLLWの大量処理を想定し、固液膜分離モジュールを装備した連続槽型バイオ分離装置を連続運転することにより、連続方式(模擬液を連続的に供給・排出)によるPd・Moバイオ分離性能を評価した。なお、第1槽、第2槽における模擬液の平均滞留時間は、それぞれ2 h, 0.5 hである。2成分系模擬液(Pd濃度4.6 mol/m3、Mo濃度6.1 mol/m3)を連続処理した場合、金属イオン総括回収率はPdが90%、Moが42%になることがわかった。この場合、金属イオン総括回収速度(分離装置の体積が1立方メートル)はPdが124 g/h、Moが52 g/hとなることを明らかにした。 (3)【Ru(III)イオン分離能に優れた放射線耐性微生物の探索】 HLLW模擬液からPd(II)イオンやMo(VI)イオンを分離・除去した後の残液を対象に、Ru(III)イオンのバイオ分離剤として優れた放射線耐性微生物を探索した。その結果、市販のパン酵母を化学処理して細胞表層にリン酸基を導入した化学修飾パン酵母が、2成分系Ru(III)/Rh(III)模擬液においてRu(III)イオンを選択的に効率よく吸着分離できるバイオ分離剤となることを見出した。
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