研究課題/領域番号 |
17H06238
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻井 敬亘 京都大学, 化学研究所, 教授 (00217308)
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研究分担者 |
榊原 圭太 京都大学, 化学研究所, 助教 (20618649)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 高分子ナノコンポジット材料 / セルロースナノファイバー / ボトルブラシ / ナノファイバーネットワーク |
研究実績の概要 |
自然界の精緻なナノファイバーネットワーク構造に、ガラス状(樹脂)・ゴム状(エラストマー)・ゲルといった粘弾性の異なるマトリクスを導入した新規ナノコンポジット材料の構造-物性相関の解明と卓抜機能開拓を遂行し、以下の成果を得た。(1)バクテリアセルロース(ナタデココ)に含まれる内包水を各種マトリクスに変換する基礎的知見を集積した。具体的には、段階的溶媒置換により内包水を重合性モノマーに置換後、ラジカル重合に供することで、ナノファイバーネットワーク構造を保持した高分子ナノコンポジット材料を創製し得た。NMR測定や蛍光顕微鏡観察により、セルロースナノファイバーのネットワーク構造が維持されたまま複合化(マトリクス変換)が達成されたことを実証した。(2)ガラス状ポリメチルメタクリレート(PMMA)をマトリクスとしたナノコンポジット材料のナノインデンター測定により、材料の弾性率がナノファイバーの分散状態で説明し得ることを明らかにした。(3)ゴム状ポリエチルアクリレート(PEA)をマトリクスとしたナノコンポジット材料を引張試験に供したところ、ネッキングと歪硬化(strain hardening)の挙動を見出し、最終的にはセルロースナノファイバーの結晶弾性率により予測される理論弾性率に近い力学物性を実現した。この挙動を、大変形領域における架橋点の可動により説明し得た。(4)高密度櫛型ポリマーであるボトルブラシとの複合ハイドロゲルを創製した。そのマクロトライボ特性について、独自に開発した変位計測系と摺動面観察系を組み込むことで、複合的に議論しうる素地を整えた。 以上の結果は、ナノファイバーネットワークの微視的な構造に起因する独特な力学物性と捉えることができる。これを裏付けるために、材料変形時における微視的構造を超解像顕微鏡観察や小角X線散乱(SAXS)測定により解明するための予備検討も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルロースナノファイバーネットワークにPMMA(樹脂)・PEA(エラストマー)・ボトルブラシ複合ハイドロゲルを導入した新規ナノコンポジット材料を創製し、各ナノコンポジット材料の力学特性に関する基礎的知見の獲得に成功した。また、材料変形時のその場観察・測定の基盤も揃いつつあり、初年度としては研究がおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
超解像顕微鏡法等によるネットワーク構造の解析及び応力印加過程のその場観察に注力する。これまでの検討では十分な蛍光コントラストを得るには至らなかったが、今後、蛍光分子の選定および標識法を再検討することで、解析に十分耐えうるナノコンポジット材料を創製し、架橋構造、架橋密度、架橋点間距離などの微視的構造に関する知見を集積する。
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