研究課題
今年度は、主にkアルミナ型酸化物の薄膜、自立膜、溶液法による薄膜・厚膜作製を試みた作成に転写して、測定した分極値が理論計算値と一致す ることを確認した。また、溶液法では昨年度、GaFeO3とAlFeO3の薄膜作製に成功しているが、本年度は2元系であるkアルミナ型 Al2O3、Ga2O3、Fe2O3の薄膜化も試みた。ウルツァイト型構造に関しては非極性のh-BN型窒化物薄膜を作製し、酸素導入あるい は金属のドーピングによる局所構造のチューニングで極性構造に転換できるかその可能性について調査した。従来kアルミナ型 強誘電体は単結晶、多結晶ともリークが大きく強誘電性の測定が困難であり、SrTiO3(111)面上に堆積されて強誘電性と磁性 が評価されている。本年度は、単結晶のリークを押さえるべく、単結晶に価数の異なる2元素を共添加して、絶縁性の高い結晶 を得た。薄膜に関しては、数ナノ以下から単一単結晶までドメインサイズを8桁程度変化させた膜を作製して、結晶粒界の構造 と欠陥構造を第1原理計算の結果と対照しながら詳細に検討した。さらに、これまでの研究で、kアルミナ型酸化物は、極めて良 好なRRAM特性を有することが判明しているため、各種薄膜のRRAM特性についての研究も進めた。また、昨年度、単結晶の磁気転 移を詳細に解析した結果、GaFeO3の磁気転移は2段階で進行することが判明した。この結果を踏まえ、添加元素の位置選択性を 考慮しながら、1段目の磁気転移点と磁化の大きさを制御しながら、いわゆるマルチフェロイック特性の向上させた。また、新たなkアルミナ型酸化物は斜方晶系の単結晶基板として有用であるため、特定の方位を持つ薄膜堆積用 基板として研磨し、各種薄膜の堆積を行った。なお、昨年度から多くの重要なデータが蓄積されたため、各種国際会議にて研究成果の発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
(1)本研究で得られた成果は10回の国内会議における発表、11回の国際会議における発表を行い、このうち招待講演は7回である。(2)本研究で得られた研究成果は英文雑誌に2報報告された。(3)極めて多くの実験と理論計算を行った結果を総合して考察した結果、kアルミナ型単結晶では構成元素の化学量論比のずれに起因する電子キャリアーのドーピングは避けられず、単結晶でも温度を下げると、高い絶縁性が得られるが、抗電界が大ききなるため、典型的な強誘電体の特性が得られないことが判明した。また薄膜は、ナノレベルの大きさを持つ分域を伴うため、粒界に起因する伝導を完全に抑制するすることができず、さらに、結晶学的な要因で、薄膜では、分極が理論値に到達できない事が判明した。(4)我々のグループで提案した、ウルツァイト型化合物の強誘電性が、ドイツのグループにより窒化物で検証された。酸化物ではなく、窒化物で最初に強誘電性が検証されたことは、実用上、極めて重要な意味を持つ。このように、本年度は、2元化合物強誘電体の研究上、いくつかのブレークスルーを迎えることができた。
2元化合物強誘電体のうち、kアルミナ型に関しては、二年間の集中的な研究の結果、残念ながら理論値と一致する分極値を実験的に求めることができなかった。しかし、特異なドメイン構造に起因する分極の短時間緩和、ナノドメインの大きさを反映する特異な分極機構について、新しい強誘電体科学として提案する必要性が有り、積極的に論文化する予定である。また、ウルツァイトにおける強誘電性は、残念ながら我々のグループで実験的に理論を検証することができなかったが、論文発表当時、注目を全く集めなかった状況に比較して、俄然、本系の強誘電性に注目が集まっていることは重要であり、次年度以降積極的に、成果を成果を世間に知らしめるばかりでなく、酸化物系でも新強誘電体を報告したい。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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