研究課題
実験動物モデルの評価には以下の課題がある。ⅰ)技術面:麻酔は神経や循環器の機能に大きく影響し、手術による痛みも強烈である。施術や評価には個 人差があるため、再現性に乏しい場合もある。さらに、観察には長時間を要することもあり、評価者の負担になる。ⅱ)評価項目:疼痛やストレス、生活リズムなど、ヒトの疾患管理の上で非常に重要な項目を、実験動物を用いて客観的に評価することが難しい。ⅲ)倫理面:各々の評価を単独で行う場合も多く、非常に多くの実験 動物の犠牲を要する。実験動物を長時間拘束することにも動物福祉の観点から問題がある。以上の課題を解決るには、動物にとってより自然な環境下で、彼らの生体情報や情動を、客観的かつ総合的に評価できる技術の確立が必須である。そこで本提案 は、実験動物からより重要な情報をより多く、より簡単に取得できる技術の開発を目的とする。具体的には、画像解析技術や人工知能を応用し、無麻酔、無拘 束、非侵襲の状態で生体情報や情動を評価できる、新しい実験動物評価系を確立する。これまでに、マウスとラットの両方を長時間にわたって撮影し、大容量のファイルを適切かつ早く転送できるシステムを構築することに成功してきた。また、得られた画像から、これらの動物の体の特徴点を検出したり、ひっかきやグルーミングといった一般行動を検出できるシステムを構築することに成功した。さらに、これらの確立したシステムが、アレルギーや肺炎など、実際の病態モデルの評価に有用であることを示すことにも成功した。
2: おおむね順調に進展している
マウスのひっかきやグルーミング(毛づくろい)を検出するには、当初使用を予定していたカメラの画質やシャッター速度では不十分であることが判明した。このため、撮影条件の再検討を行ったため、数カ月の遅れが生じた。しかし、その後再構築した撮影システムで得られた動画の解析は順調に進んだ。
これまでに、①マウスやラットを長時間にわたり撮影できるシステムの確立、②体の特徴点を追跡できるシステム、③ひっかきやグルーミングなどの一般行動を検出できるシステムの構築に成功した。今後、これらのアプリケーションとして、痛みや病態の評価を進めてその有用性証明を進めるとともに、成果をまとめて報告していく。
すべて 2018 その他
すべて 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 1件、 査読あり 9件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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