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2017 年度 実績報告書

植物におけるアポミクシス分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17H06256
研究機関埼玉大学

研究代表者

高木 優  埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (40357348)

研究分担者 木下 哲  横浜市立大学, 木原生物学研究所, 教授 (60342630)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2020-03-31
キーワード転写因子 / リプレッサー / アポミクシス / シロイヌナズナ / エピジェネティック制御 / 胚乳 / 胚 / キメラリプレッサー
研究実績の概要

本研究では、受精をおこなわずに種子を形成する現象である植物の「アポミクシス(無融合生殖)」の分子機構解明を目指す。アポミクシスは、これまでに400種類におよぶ植物で見つかっているが、穀物では見つかっていない。アポミクシスを人為的に誘導できればF1ハイブリッド有用形質の固定が可能になるなど、育種革命をもたらす。しかし、アポミクシスを人為的に誘導し得る鍵因子は未だ同定されていない。植物の種子は「胚乳」と「胚」の二つの独立した組織から成り立っており、人為的アポミクシスの実現には両組織の発生誘導が必須である。植物は受粉後、2つの花粉精核が、メス側の中央細胞核と卵細胞核とに重複受精することで、中央細胞は「胚乳」に、卵細胞は「胚」に発生して種子を形成する。これら「胚乳」発生と「胚」発生はそれぞれ独立した機構によって制御されており、本研究では、受精なしで「胚乳」または「胚」の発生を誘導するキメラリプレッサーラインを用い、まずはアポミクシス性「胚乳」と「胚」それぞれの発生機構を個別に解析する。研究代表者は、シロイヌナズナ転写因子キメラリプレッサーライブラリーのスクリーニングから、受精なしで胚乳発生および胚発生を誘導するキメラリプレッサーラインをそれぞれ複数個同定した。本研究では、同定したキメラリプレッサーラインを礎に、未受精で形成されるアポミクシス性「胚乳」と「胚」のそれぞれの発生機構を解明し、種子形成の過程を追うことで、これまでだれも為し得ることのできなかった人為的アポミクシス誘導の実現を目指す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

胚乳発生を誘導するキメラリプレッサーの転写因子をESP1, ESP2, ESP3と命名した。これらをツールとして、胚乳発生時の転写ネットワーク解析、およびエピゲノムのリプログラミングの実体解析による胚乳発生機構を解明するため、受精非依存的に形成された胚乳が胚を養育する能力をもっているかどうかを、花粉精核が1つだけ機能する変異体を用いた胚のみを受精させる系(single fertilization)による解析をおこなった。その結果、野生型植物においては、受精無しでは胚発生は球状型胚で発生が停止してしまうが、ESP1キメラリプレッサーによって誘導された胚乳は、自立胚である心臓型胚まで育成できることを明らかにし、胚養育能のある胚乳であることを明らかにした。ESP3プロモーターとレポーター遺伝子からなるコンストラクトを発現する植物体の解析から、ESP3は受精後に発現し、特に胚珠内で特異的に発現する遺伝子であることが明らかになり、さらにゲノムメチル解析から、メチル化されている遺伝子であることが明らかになった。このことは、ESP3がインプリントされる遺伝子である可能性を示した。さらにイネにおいて、受精無しで胚乳形成の誘導に上記の結果は、これまでのアポミクシス研究では報告されていない新規な発見である。本年度は、ESP1,ESP2, ESP3の機能に関する特許を申請した。次年度はこれらの遺伝子の機能を学術論文にて発表を行う。

今後の研究の推進方策

アポミクシス機構の解明のため、30年度は、下記の課題につ移転解析をおこなう。
(1) アポミクシス性「胚」発生機構の解析:1-1, キメラリプレッサー、キメラアクティベーターを用いた、母親由来細胞からのクローン胚形成を試みる。1-2, 母親由来細胞から形成されたクローン胚を検出するための胚マーカーの開発
(2)アポミクシス性「胚乳」発生機構の解析:2-1, キメラリプレッサーが誘導した受精非依存的胚乳におけるトランスクリプトーム解析と、ターゲット因子の同定。2-2, キメラリプレッサーが誘導した受精非依存的胚乳における貯蔵物質の解析
(3)「胚」と「胚乳」の同時誘導によるアポミクシスの再現: 3-1, 「胚」と「胚乳」の同時誘導に必要な時期・組織特異的発現プロモーターの単離と解析。3-2, 「胚」と「胚乳」の同時誘導によるアポミクシスの再現

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 産業財産権 (2件)

  • [学会発表] Analysis of RSE1 (REPRESSOR OF SOMATIC EMBRYOGENESIS 1) transcription factor that control cell totipotency in Arabidopsis2018

    • 著者名/発表者名
      Tsubasa Yamagata, Miho Ikeda, Masaru Ohme-Takagi
    • 学会等名
      日本植物生理学会 第59回年会
  • [学会発表] Analysis of SNB1 transcription factor that positively regulate parthenocarpy2018

    • 著者名/発表者名
      Hibari Hayashi, Miho Ikeda, Masaru Ohme-Takagi
    • 学会等名
      日本植物生理学会 第59回年会
  • [学会発表] 分化全能性を制御する転写因子CR117の機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      山形翼、池田美穂、高木優
    • 学会等名
      日本植物細胞分子生物学会 第35回年会
  • [学会発表] SNB1転写因子による単為結果性誘導メカニズムの解析2017

    • 著者名/発表者名
      林陽葉莉、池田美穂、高木優
    • 学会等名
      日本植物細胞分子生物学会 第35回年会
  • [学会発表] Analysis of SNB1 transcription factor that induces parthenocarpy2017

    • 著者名/発表者名
      Hibari Hayashi, Miho Ikeda, Masaru Ohme-Takagi
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Plant Biology
    • 国際学会
  • [学会発表] Analysis of transcription factor that regulates plant cell totipotency in Arabidopsis2017

    • 著者名/発表者名
      Tsubasa Yamagata, Miho Ikeda, Masaru Ohme-Takagi
    • 学会等名
      Taiwan-Japan Plant Biology
    • 国際学会
  • [産業財産権] 受精を介さず種子植物の胚乳発生を誘導する核酸分子及びベクター、並びに受精を介さず胚乳を発生しうる組換え種子植物及びその作製方法2018

    • 発明者名
      高木優、池田美穂、光田展隆、大島良美
    • 権利者名
      産業技術総合研究所生物 埼玉大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      039033
  • [産業財産権] 受精を介さず種子植物の果実の生長を誘導する核酸及びベクター、並びに受精を介さず果実の生長が誘導される組換え種子植物及びその製造方法2018

    • 発明者名
      高木優、池田美穂、光田展隆、大島良美
    • 権利者名
      産業技術総合研究所生物 埼玉大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      039074

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公開日: 2018-12-17  

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