研究課題
未受精で胚乳発生を誘導する転写因子ELONGATION OF SILIQUE WITHOUT POLLINATION (EST)に対するキメラリプレッサーをモデル植物であるシロイヌナズナから5個単離し、さらにそれらのイオーソログを単離した。シロイヌナズナでは、2つの花粉精核が一つしか受精しない変異体を用いて、卵細胞のみを受精させ、ESPによって誘導される未受精の胚乳が胚の養育能力があるかについて実験を行なった。その結果、野生型では、卵細胞のみ受精させた場合は球状胚までしか育たないが、ESP3キメラリプレッサー発現体における未受精胚乳は、胚を心臓型胚まで養育できる能力があることを明らかにした。その要因を調べるためESP3キメラリプレッサー発現体の胚珠のトランスクリプトーム解析を行ったところ、受精後にのみ発現するインベルターゼ、糖輸送タンパク質遺伝子の発現が有意に上昇していることがわかり、胚の養育に必要な栄養が未受精で供給されている可能性が示された。さらに5種類のESPイネオーソログOsESPを個別に発現するイネ形質転換体を作成した結果、いづれのOsESPキメラリプレッサー発現体においても未受精で胚珠が肥大することがわかり、ESP転写因子は、双子葉および単子葉においてもESPは、未受精で胚珠を肥大させる機能を持っていることが明らかになった。さらにイネOsESP発現体においては、明瞭な澱粉が蓄積し、未受精でコメを作る可能性が示された。一方、アポミクシス性胚形成において、柑橘類でみられる不定胚誘導によるクローン胚形成誘導を行うために、高頻度で不定胚を誘導するRSE1キメラリプレッサーをシロイヌナズナで発現させ、これまでに一つの胚珠内に2つの胚をもつ種子の作成に成功し、特許申請を行った。未受精の胚乳形成に関わるESP3転写因子の機能解析の結果については、現在投稿中である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2021 2020 2019
すべて 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)