研究課題/領域番号 |
17H06262
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大戸 茂弘 九州大学, 薬学研究院, 教授 (00223884)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 生体リズム / 体内時計 / 時計遺伝子 / 環境応答 / システムバイオロジー |
研究実績の概要 |
野生型WTマウスまたはDrug A受容体KOマウスを行動解析装置に7日間飼育した後、明期を8時間前進させ明暗周期サイクルの変化に対する行動シフトに及ぼすDrug A受容体欠損の影響を検討した。Drug A受容体欠損マウスでは、明暗周期変動に対する行動リズム変化が野生型と比較し遅延していた。 両マウスを行動解析装置に7日間飼育した後、明期を8時間前進させ、その後、恒暗条件下で飼育した際の行動の変化に及ぼすDrug A受容体欠損の影響を検討した。Drug A受容体欠損マウスでは、恒暗条件下の行動リズム周期が野生型と比較し長いことからSCNに存在する時計遺伝子の発現リズムに何らかの機能的変化が生じていると考えられる。両マウスSCNの時計遺伝子をIn situ hybridization法を用い測定した結果、時計遺伝子のCry1の発現リズムが変容していた。 両マウスを行動解析装置に7日間飼育した後に、常に照明をOFFにした恒暗条件下で飼育した自律的行動リズムの位相と周期に及ぼすDrug A点眼時刻の影響を検討した。両マウスにDrug AをCT14に点眼し、自律的行動リズムに及ぼす影響を確認した結果、WTマウス行動リズムはDrug AのCT14点眼により位相が後退したが、Drug A受容体KOマウスにおいてはその効果は認められなかった。 恒暗条件下の行動リズムに及ぼすDrug A点眼により行動リズムの周期が変容したことから、時計中枢SCNの時計遺伝子Per1、Per2発現量に及ぼすDrug Aの影響を検討した。野生型ではDrug A点眼後にSCNのPer1、Per2の発現量が変容したが、Drug A受容体KOマウスでは影響しなかった。 恒暗条件下飼育マウスに光を照射する条件またはDrug A点眼後に光照射を併用する条件下、SCNの時計遺伝子発現量に及ぼすDrug A受容体ノックアウトの影響を検討した。野生型マウスでは発現量が変化していたが、Drug A受容体KOマウスでは顕著でなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究結果より、Drug Aはその受容体を介し、時計中枢の時計遺伝子の発現量および行動に影響を及ぼす可能性が高い。また、体内時計の同調因子として最も強力とされる光に対して、Drug A受容体は重要な働きを示すことが示唆された。Drug A受容体を標的とするDrug Aは、中枢の時計遺伝子発現に影響を及ぼすことから、Drug A点眼により生体リズムの位相を操作できる可能性がある。 以上のことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年実施した課題1に加えて、課題2について検討する。すなわち、昨年度までに、Drug AはDrug A受容体を介し、時計中枢の時計遺伝子の発現量および行動に影響を及ぼすことを明らかにしている。昨年度の研究を充実させるとともに、本年度は、Drug Aが、中枢のみならず末梢の時計遺伝子発現に影響を及ぼすか否かを検討する。 恒暗条件下飼育マウス肝臓の時計遺伝子PER2タンパク質発現量に及ぼすDrug A受容体KOの影響を検討する。野生型またはDrug A受容体KOマウス肝臓の時計遺伝子PER2のタンパク質はIN VIVOイメージング装置で測定する。
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