研究課題
真核細胞生物の細胞機能は、ゲノムDNAに書き込まれた情報だけでなく、ヒストンタンパク質の翻訳後修飾パターンなどのエピジェネティック情報によって規定されている。しかし細胞が分裂する際、ゲノムDNAは複製反応によって倍加するが、ヒストンは倍加しないため、新生ヒストンがゲノムDNA上に取り込まれる。新旧ヒストンの翻訳後修飾パターンは異なるため、細胞機能維持には新旧ヒストンの翻訳後修飾パターンを揃える分子機構が必要だが、CAF-I複合体はこの分子機構において中心的役割を果たす。本研究では、(A) 複製反応経由の細胞機能のリセットを目指したCAF-I複合体の結晶構造解析を第一の目的とする。さらに、(B) CAF-I複合体を含む超分子複合体の結晶構造解析を通してCAF-Iの機能表面を明らかにし、細胞機能をリセットするCAF-I変異体やCAF-I機能阻害剤の作製を目的とする。これまで、目的として挙げた(A)に対応して、CAF-I複合体の大量精製系の確立を達成し、クライオ電子顕微鏡での観察を行なった結果、CAF-I複合体がグリッド作製中に解離してしまうことが示唆され、なんらかの方法での安定化が必要なことがわかった。また、2018年度は架橋剤による安定化を試み、架橋+ゲル濾過の実験を行なったが、適切な条件を見出すことができなかった。これらの結果を受けて2019年度は、CAF-I複合体の相互作用因子であるヒストンH3/H4について、CAF-IとH3/H4の解離定数はナノモーラーオーダーであるため、H3/H4の結合はCAF-Iを安定化することが期待される。H3/H4を共同研究先から分与してもらい、両者を混ぜてゲル濾過カラムを通したところ、高純度のCAF-I-H3/H4複合体を得ることができた。現在、クライオ電顕による観察を進行中であるが、いまだ明瞭な粒子像は得られていない。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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