研究課題/領域番号 |
17H06265
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高岡 晃教 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (30323611)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | がん / 自然免疫応答 / パターン認識受容体 / RIG-I / アダプタータンパク質 |
研究実績の概要 |
細胞質RNA センサーであるRIG-I(retinoic acid-inducible-gene-I)依存性で,がん細胞選択的(正常細胞では誘導されない)に細胞死を引き起こす全く新しい経路を見出しつつある。前年度の研究で確認した所見についてin vivoレベルで確証:マウスモデル(CT26細胞株を用いたマウス-肝転移大腸がんモデルやB16メラノーマ移植マウスモデル)にて、3pRNA-MENDを静注投与した。組織の蛍光染色による解析の結果、正常肝細胞の細胞死はみとめず、がん細胞特異的に細胞死が誘導されました。一方、比較対象とした抗がん剤(ドキソルビシン)投与は、がん細胞のみならず、正常肝細胞の細胞死を誘導した。3pRNA によるRIG-Iシグナルの活性化が、実際に腫瘍に対する適応免疫の誘導に寄与しているかについて以下の方法を用いて検討。(i)再移植によるメモリーT細胞による抗腫瘍効果を検証する。(ii)抗CD8抗体を用いて、キラーT細胞依存的な抗腫瘍効果を証明する 等。上記マウスモデルを使用して、(i)再移植によるメモリーT細胞による抗腫瘍効果を検証した。その結果、3pRNAを投与したマウスに、腫瘍を再移植すると、腫瘍の形成がみとめられなかった。このことから3pRNAはメモリーT細胞を活性化していることが間接的に示された。(ii)また、CT-26皮内移植モデルを使用し、抗CD8抗体を用いて、キラーT細胞依存的な抗腫瘍効果を検討した。その結果、抗CD8抗体により腫瘍形成が促進されたことから、3pRNAはがん細胞直接的な細胞死のみならず、適応免疫系の活性化を介して抗腫瘍効果を発揮していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に予定していた課題についてはおおむね全て検討した。
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今後の研究の推進方策 |
創薬応用へ向け候補化合物のスクリーニングを行う:RIG-I の合成リガンドの周辺化合物の探索として,TAT ペプチドなどを付加した細胞内移行性改良型フォーカストライブラリーなどを作成しハイスループットスクリーニングを行う。一方でRIG-I 下流の新規経路が明らかになったので、がん細胞で特異性を示す分子に着目し、その分子の活性を制御する化合物スクリーニングを行う。実際にマウスモデルを用いてその効果を評価する。
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