近年、過剰な自然免疫応答が自己免疫疾患の引き金となることが注目されている。ウイルスRNAセンサーMDA5はウイルス感染に対する自然免疫応答に置いて重要な役割を果たすが、MDA5の異常な活性化が一型糖尿病やSLEなどの自己免疫疾患に関与することが近年明らかになってきた。我々はMDA5の新規抑制因子としてリン酸化酵素RIOK3を同定し、さらにRIOK3欠損マウスの樹立に成功した。このRIOK3がMDA5のブレーキとして生体内で重要な役割を果たすという仮説のもと、以下の解析を行った。 平成29年度は、野生型及びRIOK3欠損マウスから胎児由来線維芽細胞、樹状細胞、マクロファージを単離し、MDA5経路で認識されるウイルスである脳心筋炎ウイルス(EMCV)を感染させ、Ⅰ型インターフェロンや種々の炎症性サイトカインの産生誘導について詳細に検討した。さらに野生型及びRIOK3欠損マウスを用いて、個体レベルでのEMCV感染実験を行い、生存率や血中サイトカイン濃度、ウイルス量の違いについて詳細な解析を行った。 自己免疫疾患患者ではMDA5をコードする遺伝子Ifih1に一遺伝子多型を認める場合がある。我々はSNPs由来の変異により、RIOK3による活性制御が破綻しているという仮説を考えた。平成29年度は、SNPsを導入したMDA5変異体の発現ベクターを作成し、シグナル伝達への影響を検討した。その結果、複数のMDA5変異体の過剰発現によって、IFN-β プロモーター活性の上昇を認めた。これらの変異体とRIOK3との相互作用については現在解析を行っている。 さらにMDA5の新規制御因子DNAJB1を同定し、DNAJB1がHSP70と協調してMDA5-MAVS経路を制御していることを明らかにした。
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