研究課題
平成29年度では、低酸素予測の方法として、悪性神経膠腫32症例の病変領域を30×30ピクセルのRegion of Interest(ROI)に分割し、それぞれの区域が低酸素状態か否かを予測する検討を行った。合計3453個の正方形領域に対してConvolutional neural network(CNN)を用いて解析を行うと、ガドリニウム造影T1強調画像(Gd-T1WI)、FDG-PET画像、拡散強調画像(DWI)の3種類の画像から、精度88.4%で低酸素領域を同定することができた。それぞれの画像単独での精度はGd-T1WIで86.4%, FDGで81.6%, DWIで76.2%と、Gd-T1WIが低酸素予測への寄与分が最も大きいことが示唆された。この結果は、同年の米国核医学会(Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging)で口頭発表を行い、今後の検討に有意義な討論をすることが出来た。また、MRIの血流画像や、磁化率マッピングのシークエンスを用いてピクセル単位での検討を行った。低酸素イメージングであるFMISO-PETが陽性を示した15症例の脳腫瘍患者の画像を、ロジスティック回帰で解析したところ、精度75%程度でピクセル単位での低酸素の予測が可能であることが明らかになった。セグメンテーションを行うためにはピクセル単位での解析が重要であり、次年度の目標である低酸素領域のセグメンテーションの足掛かりとなった。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度のSociety of Nuclear Medicine and Molecular Imagingで口頭発表を行った際、今後の検討に重要な討論を行うことが出来た。また、ピクセル単位での低酸素予測の検討を行えたことで、次年度の検討の足掛かりとなった。
平成30年度はこれまでの知見をふまえ、低酸素領域のセグメンテーションを行うことを目標とする。セグメンテーションを行う実際のNeural Networkとしては医療画像のセグメンテーションで用いられることの多いU-netの導入を検討している。セグメンテーションは画像認識のタスクの中では難易度の高い解析になるため、データ量の不足が問題になる可能性が考えられる。そこで、入手可能な臨床画像を可能な限り収集することに加え、データ量の不足を補うための基本的な技術として知られている、元画像に対して回転や拡大縮小を行い新たな画像とする方法などをを積極的に活用し、解析を進める予定である。昨年度行った、ピクセル毎の予測では、脳血流画像や定量的磁化率マッピングなどといった比較的特殊なMRIシークエンスを用いたが、広く普及できることを目標に、より平易な画像シークエンスからの予測を試みる。得られた結果は、日本核医学会、日本放射線学会の他、Society of Nuclear Medicine and Molecular ImagingのAnnual Meetingで発表を行い、そこで行われた討論を反映した上で、科学雑誌に投稿する予定である。
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