悪性腫瘍における低酸素状態はその悪性度との関係性が強く示唆されている。腫瘍の低酸素状態をin vivoに評価する方法として、18F-fluoromisonidazole(FMISO)などのポジトロン断層撮影法(PET)製剤を用いる方法があるが、その合成には特別な設備や、高度な技術を持つ専門家が不可欠であり、臨床使用が可能な施設は世界的に見ても少ないのが欠点である。そこで今回申請者は、日常臨床で用いられている既存の設備、既存の装置で撮像可能な画像検査から、低酸素状態を予測する研究を計画した。平成30年度では、最終的な目標である低酸素領域のセグメンテーションを目指し、ボクセル単位での低酸素予測を試みた。具体的には、低酸素イメージングであるFMISO-PETが陽性を示した15症例の脳腫瘍患者の画像を対象とし、FMISO集積をより一般的なモダリティで予測する検討を行った。予測するための画像モダリティとして、FDG-PET画像に加え、FLAIR画像、ダイナミック造影MRIの解析から算出される体積移動係数(Ktrans)画像、血液量(Vp)画像、および、動脈スピンラベル標識法を用いたMRIから得られる脳血流画像を用いた。すべての画像はMRIのT1強調画像にリスライスし、ボクセルごとに各モダリティが示す値をロジスティック回帰分析してFMISOの集積の有無を予測した。FDGを含む上記すべてのモダリティを用いた場合、AUC 0.892で予測可能であった。FDGを除いたMRIの各モダリティのみでの予測精度はAUC 0.844だった。ロジスティック回帰分析以外にも、3層の全結合ニューラルネットワークやK means、ランダムフォレストを試したが、いずれもロジスティック回帰より精度が劣る結果となった。現段階ではサンプル数が少なく、精度の高い予測が可能かどうかについては、今後の検討が必要である。
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