研究実績の概要 |
今年度は北海道大学薬学研究院薬剤分子設計学教室の協力を得て,本研究の核となるレザフィリン(NPe6 )を含有した新規ナノ粒子の開発を行った.まず,完成した新規ナノ粒子を北海道大学工学研究院超高圧電子顕微鏡研究室の協力を得て電子顕微鏡にて微細構造を観察していただいた. 次に,当研究室において肺癌細胞株(A549),悪性胸膜中皮腫細胞株(H2052,H2452,H28,H226,211H)を用いて新規ナノ粒子のがん細胞への集積の検討を行った.Flow cytometryを用いた解析では,各細胞株にNPe6単独群とナノパーティクル封入NPe6 群(以後Nano-NPe6群)を0.3, 1.0μg/mlの濃度で導入し,2時間のincubateの後にそれぞれの細胞への集積を検討した.いずれの細胞においてもNPe6単独群では非投与群と比較してほとんど波形に変化を認めなかったが、Nano-NPe6群では著明な右方移動を示し,NPe6をナノ粒子へ封入したことにより、がん細胞内への取り込みが優位に亢進していることが示された.さらに蛍光顕微鏡を用いて細胞内への集積の確認を行った.いずれの細胞株においてもNPe6単独群では細胞質内にはほとんど蛍光を観察できなかったが,Nano-NPe6群では細胞質への著明な蛍光の取り込みを確認することができた. 以上より,NPe6をナノ粒子へ封入することによって予想通り細胞内へのuptakeが著しく亢進していた。本結果は今後の実験計画として予定しているレーザー照射による治療効果検討において著明な殺細胞効果の増強が大いに期待されるものであると考えている。
|