マラリアは蚊によって伝播されるベクター媒介性感染症の一つで、その予防は殺虫剤や虫除け等の蚊対策が最重要である。しかし近年、既存の殺虫剤の環境や人体への悪影響、さらには薬剤耐性蚊の出現などの問題から新たな蚊対策法の開発が望まれている。そこで本研究では、哺乳動物に対する安全性と環境負荷の低さから次世代の殺虫分子として注目されている殺昆虫天然毒「ヴェノム」の利用に着目した。マラリア原虫にヴェノムを発現させることで、病原体自身により蚊を致死または伝播不能状態にする方法論の確立を目指す。①インジェクション法によるヴェノムのスクリーニング、②ヴェノム発現システムを検討した上でのヴェノム遺伝子導入組換え原虫の作製、③組換え原虫のヴェノム発現パターンの解析、④組換え原虫感染蚊におけるin vivoでの各種感染表現型の解析を行い、組換え病原体を利用した新たなベクター媒介性感染症制御法の開発を目的とする。 Melittin、TP10、Maurotoxin、Tf2、Chlorotoxin、ω-Grammotoxin SIA、Hma3、VSTX3、Jingzhaotoxin XIなどハチ、サソリ、クモ由来のヴェノムを入手した。スクリーニングの結果、「Melittin」「TP10」において蚊への毒性が確認された。これらのヴェノム遺伝子を蚊への感染時期特異的に原虫に発現させるのが望ましい。そこで、プロモーターアッセイを行った結果、サーカムスポロゾイト遺伝子が最適なヴェノム発現制御プロモーターであることが推測された。
|