【目的】 本研究では in vitro実験系において,(1) NSAIDsが PICUPを用いたαSオリゴマー形成過程,およびαSオリゴマーを核としたαS線維伸長(伝播)過程に直接的な阻害作用を及ぼすかを検討する.そして(2) NSAIDsとαS分子種(モノマー,オリゴマー,線維)との分子間相互作用を解析し,その作用機序を明らかにすることを目的とする. 【方法】 10種類以上のNSAIDsについて検討した.αSオリゴマーはPICUPにて形成させ SDS-PAGEにて解析した.線維伸長(伝播)過程は,PICUPオリゴマーをNSAIDsで前処理後に生体条件下 試験管内αS凝集モデルに添加して線維形成させ,チオフラビンS分光蛍光定量,電子顕微鏡または原子間力顕微鏡観察にて解析した.NSAIDsとαSモノマー・オリゴマー・線維の分子間相互作用は三次元蛍光スペクトラムで解析した. 【結果】 解析したNSAIDsの一部は,濃度依存性にαSオリゴマー形成阻害作用を示した.阻害作用を示したNSAIDsでは,既形成オリゴマーを核としたαS線維伸長の阻害がみとめられた.形態学的観察では,αS凝集体形成の抑制が確認された.さらに三次元蛍光スペクトラム解析では,一部のNSAIDsとαSモノマー・αSオリゴマー・αS線維間で強い分子間相互作用を見出した.特にNSAIDsとαSオリゴマーとの間で著しい相互作用がみとめられた.本年度は,in vitro実験系において,NSAIDsがαS分子種との直接的な分子間相互作用によって,αS凝集阻害作用を及ぼすことを明らかにした.NSAIDsはパーキンソン病の予防薬および病態修飾薬の有力な候補分子となる可能性がある.
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