全国各地で地域公共交通再編の動きが加速化する中、行政のみでは維持が困難との認識から、「住民主体」「地域主体」により市町村全体で支える体制構築を図ろうとしているものの、「検討」に留まり、具体的方法論まで言及されていない現状がみられた。また、「住民主体」の在り方に関して、研究会や学会で議論を行ったところ、不十分な認識および安易な運用がされている状況にあることから、「住民主体」の在り方に関して展望が開けない状況に対処し、計画へ位置づけた上でその先に何があるのか意味を持たせる必要があると考えられる。 さらに、一連の研究活動を通じて新たに得た知見が、韓国における交通政策である。韓国でも我が国同様、多様な交通政策が進められており、近年は交通空白地域においても進められている。そこで、京畿道議政府市で運行されるデマンド型タクシーに関してヒアリング調査を行ったところ、一般タクシーと比較して住民の満足度が高いという実態や、行政が利用者に対して定期的にインタビュー調査を行うことで政策に反映させていく体制が整えられているという実態が明らかとなった。さらには長期的な視点として、利用回数および外出回数が今後増加することで、市場や中心市街地の活性化につながるといった波及効果に対する期待がされている。 なお、以上を基に新たな研究課題「地方都市における住民交通を育てる地域拠点との複合的展開に関する研究」で、2019年度からの科学研究費補助金(若手研究)の採択にもつなげている。
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