本年度は、昨年度に分離した植物病原菌であるRalstonia sp. B5-1 株の細胞外分泌多糖欠損変異株と宿主植物であるミヤコグサとの病原性相互作用の観察及び解析を実施した。分離された4株の細胞外分泌多糖欠損変異株の全てにおいて、ミヤコグサに対する病原性能が低下していることが示された。しかしながら、この病原性低下の程度が菌株ごとに異なることが観察された。このことからRalstonia sp. B5-1 株の細胞外分泌多糖の有無が病原性能力の低下に直接起因している結論には至らなかった。次に根粒菌とRalstonia sp. B5-1 株、及び細胞外分泌多糖欠損変異株の共接種試験を行い、Ralstonia sp. B5-1 株は、根粒菌が誘導する根粒共生を強く抑制するのに対し、細胞外分泌多糖欠損変異株と根粒菌との共接種区では、根粒共生の抑制程度が軽減された。一方、ミヤコグサepr3変異体とRalstonia sp. B5-1 株、及び細胞外分泌多糖欠損変異との表現型観察からは、ミヤコグサ野生体との違いが見られなかった。これらの表現型データを補完するための発現解析を行うことができなかったことから最終的な結論に至ることができなかったが、Ralstonia sp. B5-1 株の細胞外分泌多糖を介した病原性は、宿主植物のEPR3受容体を介していないことが本研究より示唆された。
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