本研究は、歴史的制度論の観点から、中国共産党と人民法院(司法機関)の領導関係を捉え直し、中国共産党一党体制下における人民法院の政治的機能を明らかにすることを目的とした。本研究が明らかにしたことは、以下の三つである。第一に、1980年代後半を決定的契機として、人民法院の政治的位置づけが相対的に高められ、その位置づけは現在まで続いている。第二に、中国共産党は司法の持つ「火災警報器」としての役割を、公安組織の肥大化を抑制するために利用した。第三に、人民法院の持つ利益構造を変える政策(法曹人材の専門職業化政策)を中国共産党が推進する際、人民法院は「部分的な対抗組織」になりうるということである。
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