本研究は、2014年地方公務員法改正後、教員の資質向上の側面だけに機能させてきた目標管理手法による教員人事評価制度に関して、各都道府県の教育委員会がいかにその評価結果を教職員人事管理・処遇へ反映するかという運用実態について研究するものである。 前年度と同じ研究手法で、本年度は地方公務員法改正前までには目標管理手法を用いる教員評価制度を実施しているものの評価結果を人事管理に活用しなかった自治体(教職員人事評価制度を教員育成のみに運用していたタイプ)を中心に研究調査を行った。具体的には、法改正前後の教職員人事評価制度における運用手法の相違点に注目し、各教育委員会では、地域に即した教職員人事評価制度を構築するに当たって、その基本的な考え方を考察し、これを教職員の資質向上と人材育成の視点からその意義と課題について学会発表を行った。 その結果、地公法改正後の教員評価制度について以下のように指摘できた。(1)目標管理手法による教員評価制度と旧勤務評定や別立ての昇給制度と一本化する制度の修正が見られ、「実績評価」と「能力評価」との2本軸による人事評価体制が確立された。(2)旧勤務評定や別立ての昇給制度は「能力評価」として統合されたことによって、評価基準の提示や複数評価者による評価、そして評価結果の開示もするようになった。これは教員評価制度の透明性と納得性の向上に繋がったといえる。(3)評価結果の活用に関して、昇任、昇給や勤勉手当へ反映することになったが、給与格差を付けようとするインセンティブとしての成果主義的な運用が見られなかった。
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