研究課題/領域番号 |
17H06510
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 悦子 東北大学, 教育学研究科, 博士研究員 (70749415)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 移民 / ブラジル / 日本 / 社会参加 / フィールドワーク |
研究実績の概要 |
本研究は、ホスト社会の主流文化へのかかわりに焦点を当て、移民子弟のホスト社会への参加過程を明らかにすることが目的である。100年以上前に日本からブラジルへ渡った日本移民の子弟と1990年頃からブラジルから日本へ移住した在日ブラジル人を対象に、彼らの生活世界や教育経験を比較分析し、多角的に移民子弟の社会参加プロセスを探求する。 本年度は、ブラジルの主流文化の一つであるカトリックに焦点を当て、ブラジルでのフィールドワークを実施した。日系二世のライフヒストリーの語りの収集と日系カトリック共同体での参与観察を行うことで、ライフステージに応じたブラジル社会への参加のあり方とその変容が浮き彫りになりつつある。これまでの日系二世の教育経験や職業選択などに加え、その背景にある一世たちの日本でうけた教育や価値観、移住先でのネットワーク、親族関係などを把握することで、立体的に移民子弟のホスト社会への参加プロセスを確認することができた。また、現在、高齢者である日系二世にとって、エスニック組織は老後のブラジル社会への参加や存在意義の発信の場であり、トランスナショナルな生活世界に生きる日系二世の現在とその意味が明らかになりつつある。 さらに、日本においては予備的なフィールドワークを実施し、インフォーマントとのラポールの構築と基本的情報の収集を行った。永住する在日ブラジル人の住宅購入や子育て環境などについて聞き取り調査を行うと同時に、予定にはなかったものの散在地域の在日南米人への聞き取り調査及び地域活動の参与観察を行った。こうしたことから、集住地域に暮らす在日ブラジル人との共通点や差異が想定され、来年度からの本格的な調査活動での基盤となる視点を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたブラジルでの調査活動はおおむね順調に進んでいる。日系二世の高齢化等に伴って手記などの史料や語りが困難な場合もあったが、調査協力者のネットワークに基づいて50名以上のインフォーマントに聞き取り調査を行うことができた。また、予定していなかった複数の日系カトリック組織(構成メンバーの多くが日系二世)での参与観察も行うことができた。 さらに、本研究は在日ブラジル人の調査も今後計画しているが、一部のインフォーマントに対する聞き取り調査も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に得られた調査の成果を基盤に、本研究の目的と予定している計画に従って、調査活動を継続して進めていく。特に、次年度は、日本で生活者として暮らす在日ブラジル人への丹念なライフヒストリー調査を行う予定であるが、キー・インフォーマントの出産に伴い、移住者の子育て環境の実態についても長期的に調査を継続する予定である。 また、ブラジルの複数の日系カトリック組織が節目の年を迎え、その変容が予想されることから、ブラジルでの補足調査を行う。 さらに、国内外でのフィールドワークによって得られたデータの分析を進め、その研究成果を学会発表や学術誌への論文投稿などで社会に還元していく。
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