錯体水素化物は金属と水素からなる籠状の錯イオンを有する材料であり、リチウムのような陽イオンが固体内を高速で伝導することから全固体二次電池の固体電解質への適用が期待される。錯体水素化物におけるイオン伝導の最大の特徴は錯イオンの回転によりイオン伝導パス形成されることであり、これらの構造的・動的挙動とリチウム伝導の相関を明らかにすることで新規伝導特性の創出の可能性が導かれる。 平成30年度は、錯体水素化物のリチウムイオン伝導機構の解明と高イオン伝導性を有する水素化物固体電解質材料の創出を目指して、異なる錯イオンの複合化による構造と伝導率の変化および得られた材料を用いた全固体電池の特性を調べた。以下に詳細を報告する。 ・クロソ系錯体水素化物内の錯イオンの固溶の効果を調査するために、(1-x)Li[CB9H10]-(x)Li[CB11H12]擬似二世文系材料の合成を行なった。X線回折法により構造変化を調べた結果、x=0.3において、錯イオンの回転と超リチウムイオン伝導性を示すLi[CB9H10]の高温相が室温で合成可能であることが明らかになった。 ・インピーダンス測定・NMR測定により、0.7Li[CB9H10]-0.3Li[CB11H12]のイオン伝導特性を測定した。その結果、Li[CB9H10]の高温相の伝導率が室温まで維持されることが分かった。室温(25℃)の伝導率は6.7× 10-3 S/cmであった。 ・0.7Li[CB9H10]-0.3Li[CB11H12]を全固体電池の固体電解質に用いて電池特性調べた結果、これまでの固体電解質とリチウム負極間の界面抵抗として最も低い0.78 Ω cm2となることが見出された。
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