炎症性腸疾患は主にクローン病と潰瘍性大腸炎の2つからなるとされる疾患群である。複雑で膨大な遺伝的背景が明らかになるにつれ、単純に2つに分類できない多様な病態の存在が示唆される。そのため、その病因や表現型によって疾患のサブタイプを決定し、新しい個別化された医療を展開していく必要がある。小腸パネート細胞はαディフェンシンやリゾチームなどの抗菌ペプチドを含んだ分泌顆粒を持ち、それらを腸管内腔に分泌することで、腸内細菌叢の恒常性を保ち、腸管免疫に対して重要な役割を果たしている。さらに、腸上皮の幹細胞に近接して存在することから、上皮機能の更新や維持にも重要な役割を果たすことが示唆されている。これまでの解析で、クローン病の発症原因には腸管免疫が重要な役割を担っていることが示されており、腸管免疫の主役であるパネート細胞がクローン病に果たす役割の大きさが示唆される。本研究ではクローン病由来のパネート細胞をオルガノイド培養し、形態や機能解析を行うことを目標とした。様々な手法を用いて培養を試みたが、結果的には長期培養は困難であった。しかし大腸腺腫や大腸癌由来のオルガノイドを作成に成功したため、これらの資料を用いて、研究を行った。これらの培養上清から超遠心法によるエクソソーム分画の抽出を行った。オルガノイドおよ培養上清中のエクソソーム分画からtotal RNAを抽出。腺腫及び癌から抽出したエクソソームmiRNAに関して網羅的発現解析を行った。癌群で193個、腺腫群で129個のmiRNAが確認された。細胞内miRNAと共通して発現を認めたものの中で、癌群で3個のmiRNAの発現が亢進、12個が減少していた。そのうちmiR-1246が有意であることが明らかとされた。
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