研究課題/領域番号 |
17H06526
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西山 亜由美 東北大学, 大学病院, 医員 (50805413)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、未解明の筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)家系に新たに見出す遺伝子変異、その病原性を検証する機能解析システムを開発し、検証された病原性がもたらすALS 運動ニューロンの選択的変性機構を解明することを目的とする。 1991年より全国から集積した有数規模の日本人家族性ALS家系(111家系)に、本年度新たに12家系の追加DNA試料を得た。次世代シークエンサーを用いて、ターゲットリシークエンス解析を行い、既知変異のスクリーニングを効率的に行った。その結果、新規集積検体のうち5家系で既知変異を同定した。既知変異を同定した家系においては、その臨床像、表現型の確認を行った。本年度の解析データを合わせ、集積した全家系のおよそ半数に既知変異を同定することができた。原因遺伝子変異未解明の家系においては、その16%に候補遺伝子変異を見出した。これまでの解析で得られた成果については国際学会での報告も併せて行った。 原因遺伝子変異未同定の家系においては、引き続いてエクソーム解析を実施し、バイオインフォマティクスを用いて、新たな候補遺伝子変異を抽出し絞り込みを行った。現時点で複数の家系で異なる疾患候補遺伝子変異を見出している。疾患に連動して伝搬する変異であることを確認するため、候補遺伝子変異を有する家系内での遺伝子解析を進めている。また、培養細胞株に候補遺伝子変異を導入した形質の解析を行い、病原性が高いと想定される疾患候補遺伝子変異に対しては、人工多能性幹細胞(iPS細胞)由来運動ニューロンに目的変異を導入した細胞種選択的な病態の解明に取り組み、病原性検証プラットフォームの確立を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに集積した12家系においては、迅速に既知変異のスクリーニングを終え、5家系に疾患関連既知変異を同定することができた。同定された既知変異では、SOD1遺伝子、TARDBP遺伝子においてこれまで本邦では報告のなかった変異を同定することができた。既知変異が同定されなかった残る7家系は引き続いてエクソーム解析へ移行している。 また、これまでエクソーム解析を行っていた原因遺伝子変異未同定の家系において、得られたシークエンスデータに関して、表現型、各種データベースのアレル頻度や機能的変化予測、相互作用・関連分子機構に基づくソフトウェアを用いて、複数の家系で新規候補遺伝子変異の抽出を行った。その結果、複数の家系で病原性が高いと想定される候補遺伝子変異を抽出することができた。抽出した候補遺伝子変異に関して、家系内で疾患に連動して伝搬しているか確認を進める一方で、培養細胞株に候補遺伝子変異を導入した形質の解析を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
計画に準じて、抽出した候補遺伝子変異に関して、家系内での遺伝子解析を進めつつ、機能解析法の確立を目指す。病原性が高いと想定された候補遺伝子変異に関して、部位特異的変異導入を用いて遺伝子変異体を樹立した後に、野生型(対照)および変異体を各種培養細胞に導入し、発現・機能解析を予定している。さらに、運動ニューロン選択的な解明のために、健常ヒト由来iPS細胞から分化誘導した運動ニューロンに遺伝子導入を行い、病原性を検証する。
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