癌の低酸素細胞の放射線抵抗性は、酸素存在下でのラジカル反応だけでは説明がつかないため、生物学的要因が示唆されているが、低酸素における放射線抵抗性を制御する分子機序は明らかになっていない。本研究課題では、低酸素性癌細胞における放射線抵抗性の原因の解明を目的として、低酸素状態がDNA2重鎖切断修復酵素に及ぼす影響、およびそれら酵素の制御機構について解析を行った。研究代表者は、1) DNA修復酵素ATMおよびDNA-PKcsについて、複数の細胞株で低酸素状態がこれら酵素の発現や活性化に影響を及ぼすこと、2) これら酵素の活性化はSrcやAMPKαを介したシグナル伝達経路に依存すること、3) AMPKαをターゲットとしたsiRNA処理により、低酸素状態におけるATM、DNA-PKcsの活性の亢進が抑制されることを明らかにした。また、ATMについては、低酸素状態における発現の亢進もAMPKαのノックダウンにより抑制されることを明らかにした。Src、AMPKαを介したDNA修復酵素の制御が、低酸素における放射線抵抗性に重要である可能性が考えられる。
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