研究実績の概要 |
本研究では、1.ヒト加齢精子が、自閉症を含む精神・神経疾患に関連する領域にどの程度エピゲノム変化を示すのか正確に評価すること 2.加齢に伴う精子のエピゲノム変化と次世代個体の自閉症様症状との関連を明らかにすることを目的とする。平成30年度は、まず大学倫理審査の承認を得て研究を開始した。次に、患者精子の収集と登録を行った。東北大学医学部産婦人科不妊外来及び不妊症専門関連病院を受診し、精液検査を受けた患者の精子(197例の精子)を収集した。精子は、精液検査後の破棄予定の精子を用いた。さらに、患者情報の登録を行った。生活習慣等に関する記述式アンケート調査では、身長、体重、職業、既往歴、年収、学歴、喫煙率、常用薬など50項目を実施し、食物摂取頻度調査票(FFQ)を用いた食品項目の摂取頻度調査も実施した。精子形態検査は、WHOマニュアル第3版より分類し(正常群132例(>20×106/ml)、乏精子症群65例)、swim-up法にて精子細胞のみを回収し、DNAを抽出した。精子のDNAメチル化解析は、RRBS法にて網羅的なメチル化解析を行った。メチル化解析の結果は、5 reads以上カバーされた1,033,310 CpGサイトについて検討した。その結果、1.クラスター解析では、乏精子群の一部にクラスターの形成がみられた 2.乏精子症では多数のインプリント遺伝子のメチル化異常を示した 3.ゲノム領域ではプロモーター領域でメチル化の違いを認め、CpG領域はCpG islandでメチル化異常に有意差を認めた(PC 0.01) 4.一部の繰り返し配列(SINE, LTR)に有意差を認めた。これらの結果より、精子数の少ない乏精子症精子では、メチル化異常の頻度および程度が大きいことが示唆された。
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