研究課題/領域番号 |
17H06534
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
照井 佳乃 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30806344)
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研究期間 (年度) |
2017-08-25 – 2019-03-31
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キーワード | 脳卒中片麻痺 / 歩行 / 3軸加速度計 / 左右対称性 / Lissajous Index / バランス |
研究実績の概要 |
平成29年度は脳卒中片麻痺患者11名のデータ収集を行った。方法は対象者の腰部第3腰椎の高さに3軸加速度計を装着し、快適歩行速度で10mの歩行を実施させた。歩行路は10mの前後に助走路1mを設けた12mとした。得られた体幹加速度から体幹運動左右対称性の評価指標であるLissajous Index (LI)を算出した。LIは値が大きいほど体幹運動が左右非対称になっていることを示すものである。LIの測定時期は対象者が回復期リハビリテーション開始後,上肢支持や介助を要さずに10mの歩行が可能となった時に初回のLI測定を行い,初回から1ヶ月後ごとに測定を実施することとした。現在まで、初回と1ヶ月後の測定を実施した。その結果,運動麻痺が重度な者は1ヶ月後LIが大きくなり,麻痺が軽度な者はLIが小さくなっていた。運動麻痺が重度な者の歩行時体幹運動左右対称性が1ヶ月後拡大することが明らかになったが,1ヶ月後以降におけるLIの変化を引き続き検討していく予定である。 本研究の先行研究として、脳卒中片麻痺患者だけではなく慢性閉塞性肺疾患患者の歩行時体幹運動左右対称性についてLIを用いて測定し、身体機能諸指標との関連を検討した。検討の結果、LIと立位バランス能力の指標である片脚立位保持時間の間に有意な負の相関関係が認められた。この結果について、2017年11月に開催された第22回アジア太平洋呼吸器学会で発表した。報告者による脳卒中片麻痺患者LIの横断的な先行研究では、LIと立位バランス能力の評価指標であるBerg Balance Scaleの間に有意な負の相関関係が認められた。これらのことから、LIは立位バランス能力と関連のある指標であり、本研究によってLIの経時的変化を検討することで、体幹運動左右対称性評価およびバランス能力評価としてのLIの有用性を検証することができると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における平成29年度の予定は回復期病棟転院後の脳卒中片麻痺患者のLIの測定を開始し、初回測定や初回測定から1ヶ月後の測定を実施することであった。現在、当初の予定通り、平成29年度には脳卒中片麻痺患者11名のLIの初回測定および1ヶ月後の測定を実施することができた。初回測定と1ヶ月後測定の結果から、麻痺が中等度から重度の患者では1カ月の経過で体幹運動はより左右非対称になっており、麻痺が軽度の患者は1カ月の経過で体幹運動がより左右対称になるという結果を得た。平成30年度は平成29年度に測定を開始した患者についてLIの経時的変化の検討を継続していく予定である。さらに、対象者数を増やしLIの経時的変化と身体機能諸指標との関連も検討していく。 また、加速度のLIが実際の腰部の動きの左右対称性を評価しているか検証するために、購入したダートフィッシュで歩行を撮影、解析し検討を進めている。方法は健常者の腰部第3腰椎の高さに3軸加速度計を装着し、トレッドミル上を歩行させる。加速度の測定と同時にダートフィッシュで歩容を後方から撮影し、ダートフィッシュから得られた左右対称性とLIの結果を比較している。現在のところ対象者数が不十分であるため、今後もLIとダートフィッシュを使用した測定の比較について検討を継続する。
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今後の研究の推進方策 |
1)脳卒中片麻痺患者のLIの測定 回復期リハビリテーション開始後、上肢支持や介助を要さずに歩行できるようになった時点で初回のLIを行い、初回から1ヶ月おきにLIの再測定を実施する。また、麻痺の程度や下肢・体幹の筋力、立位バランス能力、呼吸機能などの身体機能諸指標の測定をLI測定と同時期に実施する。LIの経時的変化およびLIと身体機能諸指標との関連を検討する。 2)LIと実際の腰部の動きの比較 3軸加速度計を腰部に装着することから、LIは重心移動だけではなく体幹運動を反映する評価指標である可能性が考えられた。脳卒中片麻痺患者の歩行中における体幹運動を測定する方法は三次元動作解析装置のみであり、体幹運動の評価は観察という主観的評価で行われることが多いため、研究計画書作成時点では重心移動の左右対称性とLIを比較する予定であったが、本研究では腰部の動きとLIを比較し、LIが体幹運動の評価であること明らかにすることとした。腰部の動きを測定するダートフィッシュはカメラを固定して動作を撮影する装置であることから、床上での歩行ではなくトレッドミル歩行を採用した。トレッドミル歩行は上肢支持せずに実施するため、トレッドミル歩行に慣れていない脳卒中片麻痺患者に実施すると転倒の危険性が高くなることから、現在のところ健常者を対象にして測定を開始している。
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