本研究では、近代から現代に至るまでのイエズス会の人文思想の特徴を捉える為に、20世紀の北米のイエズス会を代表する思想家であるB.ロナガンの思想に注目した。特に「歴史」と「世界観」という二つの観点を軸に据え、ロナガンの文献を検証した。その結果、ロナガンが、従来のカトリシズムの伝統を保持しつつ、現代の自然科学および歴史哲学の観点を統合する形で、創造的な人間理解を提示していることを明確にした。そこからに、20世紀のイエズス会人文主義思想を、この世界から乖離した静的精神性ではなく、その時々の思想的潮流と積極的に対話し応えることを目指す知的ダイナミズムとして特徴づけることができるという結論に至った。
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